間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』19
★飛矢折★
星波駅のホームで帰りの電車を待つ間、あたしはどうするべきか悩んでいた。
黒樹君は付いて行こうとするあたし達に、
「……一人で大丈夫ですから、二人は家に帰って下さい」
って言って、一人で警察署に行ってしまった。
………黒樹君が殺人犯じゃないのは、あたしは確信出来る……………でも、他の人はどうだろう?
この町に彼が来てからまだ一ヶ月も経ってない。
経ってないけど、彼の武霊の力は知れ渡っている。
今までの武霊の常識から外れた武霊だって事を………。
よく知らない相手が、とてつもない……危険な力を持っていて………その彼を暴行した不良達が、彼の目撃された近くで、武霊でしかありえない殺され方で殺された………しかも、その彼以外に不良達に接点が、動機がある武霊使いがいない。
……………そんな状況の黒樹君を……疑わない人間はいない気がする……………。
ホームに電車が入ってきて、ドアが開く。
待っていた他の人達が電車に入って行く中、あたしは電車に乗らなかった。
ホームから出る為に歩きながら、あたしは携帯電話を取り出し、美幸に電話を掛ける。
「あ!美幸?…………うん。そうなんだけど……あのね。突然で悪いんだけど、今日、美幸の内に泊めてくれない?」
★美羽★
自分の部屋の中で、私はぼーっとしていた。
付いて行こうとする私達に夜衣斗さんは、
「……一人で大丈夫ですから、二人は家に帰って下さい」
って言って一人で警察署に行ってしまった。
…………夜衣斗さんが人を殺すなんてとても思えない。
人を助ける為に、自分から傷付く様な人だよ?………そんな人が……武霊を使って人殺しなんて………段々ムカムカしてきた………あのヘボ刑事め………こうなったら………私一人ででも真犯人を捕まえてやる!
私はそう決意を固め、部屋から飛び出した。