間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』18
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夜衣斗が任意同行で星波警察署に連れて行かれた話は、噂となって星波町中に瞬く間に広まった。
しかも、
「東山!夜衣斗を逮捕とは、どう言う事だ!?」
激怒した美春が星波警察署の東山賢治が所属する少年課に乗り込んでいた。
どうやら曲解した噂を聞き付けて慌てて警察署に来たらしく、激しく息が上がっている。
星波警察署に武霊に関する専門の課はない。
それは武霊に関するあらゆる情報が忘却現象により外に出す事が出来ない為。
だから、賢治をはじめとする星波町警察の武霊使いは、表向きは普通の警官として活動している様にしなくてはいけない。
その為、賢治は星波警察最強の武霊使いと言われながら、少年課に所属している事になっており、いつもは大体少年課で待機している。
「やあ美春。元気ぃ〜?」
「元気じゃない!?ふざけるな!」
気軽に挨拶してくる賢治に、美春は近付き胸倉を掴んだ。
「わお!随分積極的なアプローチじゃない?」
「どう言う事だと聞いている!?」
「どうもこうもないよ。黒樹君は、昨日起きた殺人事件の最重要被疑者で、任意同行に応じで貰って今、取り調べを受けて貰っている所だよ」
「………被疑者?犯人として逮捕されたわけじゃないのか?」
「今の所はねぇ〜」
「そうか………」
噂が真実を曲解していた事を知った美春はほっと一息吐き、賢治から手を離した。
賢治は乱れた服装を正しながら、
「美春は、妙に黒樹君を気にかけているよなぁ〜。何でだ?」
「………」
「……………ああ、そう言えば、『彼』も黒樹君と同じタ」
「黙れ!当時いなかった奴が……知った風な口を利くな!」
思い付いた事を口にし美春を再び激昂させてしまい、賢治は肩を竦めた。