間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』17
★飛矢折★
サラっと言ったその言葉に、あたし達だけでなく、喫茶店内にいた全員の視線が黒樹君に集まった。
その黒樹君は、その視線を特に気にもせず、黙々とパフェを食べてて……って、黒樹君!そんな状況!?
「……えっと……今の聞いてたかな黒樹君?」
流石の刑事さんも困惑した表情を夜衣斗さんに向けていた。
「うん。まあ、勿体ないよね。まあ、食べ終わるまで待つよ」
軽い笑いを浮かべながら、黒樹君の隣に座る。
……何のこの人。
「一体どう言う事です!?夜衣斗さんが容疑者だなんて!」
赤井さんは感じた不快感を隠しもせずに、あたしも思った事を聞いてくれた。
「木曜日、黒樹君はある不良グループといざこざを起こしたんだってね?」
刑事さんの言葉に、あたしも赤井さんも眉をひそめた。
………まさか!?
「そう、殺されたのは、その連中。しかも、人間の仕業とは思えないほど無残な殺され方をしていたんだよ」
「でも!……だからって夜衣斗さんが容疑者にならなくちゃいけないんですか!?武霊使いは他にもいるでしょ?」
「彼らと接点がある武霊使いは、今の所黒樹君しかいないんだよねぇ〜。連中、どうも武霊使いとは極力接触しないで不良行為をしてたみたいだからねぇ〜」
………確かにそれでは黒樹君が疑われても仕方がないと思うけど……………もし、仮に黒樹君が犯人だとしても………こんなに簡単に見つかる様な犯行をするかな?きっと……いえ、絶対、分からない様にすると思うんだけどな………そもそも、普段の彼が殺人を犯す様な人間だとは………。
ふっと、あの男を殺そうとした黒樹君の姿と、必死に殺さない方法で戦う黒樹君の姿が脳裏に浮かんだ。
矛盾した二つの行動。
それが意味するのは黒樹君が非常に不安定な精神を持ってるって事。
黒樹君に視線を移すと、もう少しでパフェを食べ終わりそうだった。
………今の様子から、今日の様子を思い出しても、いつもの彼で、とても殺人を犯した人間には見えない。
少なくとも、そんな事をした彼が、平然と日常生活を送れるのかな?
…………ありえないでしょ?そんなの………。
そう思った時、黒樹君がパフェを食べ終わり、
「………行きましょうか」
っと言って立ち上がった。