間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』16
★美羽★
土曜日の放課後。
私は夜衣斗さんのおごりで、駅前にある喫茶店のパフェをごちそうになっていた。
今の夜衣斗さんにはお金に余裕がある。
それは昨日、発生したはぐれを一人で倒したのとか、剛鬼丸・高神姉弟・五月雨都雅戦とかの報奨金が今日出てて、夜衣斗さんは言わば武霊成金状態ってわけ。
っで、夜衣斗さんからなんか言い辛そうに、一昨日のお詫びにっておごって貰ってるわけなんだけど………なんで、彼女もここにいるんだろう?って、私と同じ理由か……でも、部活は?
などと思いながら、私はパフェをパクつき、私の隣に座っている巴先輩を見た。
彼女、どうも私や夜衣斗さんと違って甘い物が苦手みたいで……大盛のスパゲティを食べている。
………相変わらずよく食べる人………その栄養が胸に言ってるのかしら………
ついつい視線が巴先輩の胸に行ってしまい、その視線に気付いた巴先輩は困った表情になった。
私も何だか恥ずかしくなって、視線を夜衣斗さんの方に逃がすと、夜衣斗さんは黙々と私が注文したパフェと同じ物を食べていた。
どうも夜衣斗さんは、私と同じ様に甘い物好きみたいなんだよね………
って、事は、
「夜衣斗さん。甘い物好きなんですか?」
私の問いに夜衣斗さんは頷いた。
「じゃあ、この間見たいにお菓子作ったら夜衣斗さんにも分けてあげますね」
って言ったら、夜衣斗さんは何だか微妙な雰囲気になって………ちょっと間を開けて頷いた。
………なんでだろ?私のお菓子って、食べた人を微妙な雰囲気になるんだよね………本当に、なんでだろ?
そんな疑問を思っていると、喫茶店に東山さんが入ってくるのが見えた。
後ろに珍しく部下らしき人を引き連れて………どうしたんだろう?
私の疑問の視線に、気付いた東山さんは、いつものへらへら顔をこっちに向け、手を振って来たので、眉をひそめた。
その嫌そうな私の顔を見ているだろうに、東山さんは気にせず私達の席に近付いたので、二人も東山さんの存在に気付いて視線を向ける。
夜衣斗さんは面識がないから不思議そうに私に視線を戻していたけど、飛矢折さんはあの事件で面識があるのか、小さく、
「刑事さん?」
ってつぶやいたのが聞えた。
「やあやあ美羽ちゃん」
「何ですか?私に何かあるなら、美春さんを通す様にってこの間言われたばかりじゃないですか」
五月雨都雅の事件の後に美春さんが言い出したことなんだけど……もう忘れたのかな?……東山さんならありえる。
「ん〜そうだね……だけど、今日は美羽ちゃんに用があって来たんじゃないんだよ。残念」
「はぁ?」
じゃあ誰に用が……って、そう言えば、五月雨都雅の件で夜衣斗さんと飛矢折さんに話を聞くって言ってたけ?
そう気付いた私に、東山さんの次の言葉に私は思わず目を見開いた。
「用があるのは、黒樹夜衣斗君。君だ。うん。まあ、初めましてで何だけど、ちょっと署まで来てくれないかな?」
え?っど、どう言う事?
私がその言葉に動揺していると、
「どう言う事です?」
っと巴先輩が聞いてくれた。
「うん。昨日の深夜ね。廃工場の近くで殺人事件が起きたんだ。っで、その近くのコンビニで、黒樹君が目撃されててね」
「はぁ?なんでそれだけで、わざわざ夜衣斗さんが警察署に行かなくちゃいけないんですか?ここで」
すませばいい話じゃないですか。そう言おうとして、東山さんにとんでもない言葉で遮られた。
「だって、黒樹君がその殺人事件の容疑者だから」