間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』14
★夜衣斗★
「プ〜リ〜ン〜。プ〜リ〜ン〜」
深夜に近い夜。寝ようかなって時に、不意に部屋のドアが開いて、何だかおどろおどろしく春子さんが入って来た。
「プ〜リ〜ン〜。プ〜リ〜ン〜」
……いや、何なのよ?プ〜リ〜ン〜って……いや、まあ、プリンなんだろうけど………
「や〜い〜と〜く〜ん〜。プ〜リ〜ン〜た〜べ〜た〜で〜しょ〜」
?。食べてないけど………。
なので首を横に振ると、春子さんは、ゆら〜って感じで机の横にあるごみ箱を持ってひっくり返した。
コロンっとでっかいプリンの容器とプラスチックのスプーンが出てくる。
な!?どう言う事!!?
全く身に覚えのないプリンのカラ容器に、俺が驚愕していると、春子さんは俺の顔をじぃーっと見て、涙目になる。
「た〜の〜し〜み〜に〜、し〜て〜た〜の〜に〜」
うらみがましく俺にそろそろと近付く春子さんに、俺は後ずさりながら、
「っわ、わかりました。買ってきますから!」
っと言わざる得ず、その言葉を聞いた春子さんはあっさり涙を引っ込め、にっこり笑って、
「じゃ、でっかいプリンをよろしくね」
っと言ってそそくさと部屋から出て行った。
………どんだけプリンが好きやねん………。
思わず心の中で突っ込みを入れたが………それにしても………誰が、何で……って容疑者は二人……っと言うより二匹しかいないな。
美魅さん?
っと心の中で呼びかけると、
(あたいじゃないわよ?)
っと直に返事が返って来た。
っとなると、
じろっとベットで転がっているメガネベアを見た。
コロンっと背を向けるメガネベア。
……………
俺は無言でメガネベアの頭を鷲掴みにして、持ち上げて顔をこっちに向かせる。
………プリンらしき黄色と茶色が口の周りに付いていた。
…………さて……弁解の言葉はあるかな?
………は?ちょっと小腹が空いたので………ってか、何か食べるんだあんたら?
(あたいは人間が食べる様な物は必要ないだわよ)
じゃあ美魅は何を食べるんだ?
(人の思いだわね)
人の思い?
(感謝、信仰、恐怖、喜び、人から発せられる思いなら何でもいいだわよ)
………本当に妖怪なんだな………
(まあ、あたいみたいなタイプもいれば……)
メガネベアみたいなタイプもいると………
俺の視線に、目を反らすメガネベアに、俺は深い溜め息を吐いた。