間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』13
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博も久思も武霊使いではない。
だが、久思のそれは、星波町に来て日が浅いと言う事も起因している。
しかし、博は違う。
博は、小学生の頃から星波学園に通っている。
武霊使いになる確率と要素は久思より高い。
だからこそ、博は久思を友達にしているとも言える。
何故なら、博は自分自身の武霊が具現化するのを切望しているのだ。
正義の力を『安易に』手に入れる為に………。
そんな風に切望しているのに、明確なイメージがあるのに、なかなか具現化しない。
それは博が危険な目に遭ってない事も意味しているが、安易に力を手に入れようとしている男だ。そんな事をするはずもなく、するはずも無いくせに、危険な目に遭って武霊使いになった者に憎しみに近い妬みを抱く。
その妬みを抱く相手・夜衣斗が、武霊使いになり、それどころか、まるで博が憧れている正義の味方の様に活躍した。
活躍したのに、正義の為にその力を使わない。
あの不良達を懲らしめもしない。
そう博は思っていた。
だから、非常にいらついている。
もっとも、そのいらつく要因の一つに、昼休みの始まりに校内放送で統合生徒会から放送された、あの 不良達の退学処分通達もあるだろう。
そんなんじゃ正義じゃない!
そんなんじゃ悪は滅びない!
だったら何の為の力だ!
だったら何故俺に力がない!?
何故?何故?何故っ!?
その思いで、机や椅子にやつあたりをしてしまう。
「………博、そろそろ昼休みも終わるよ」
その言葉に、博ははっとした。
感情に身を任せて、随分と暴れてしまった。
だが、それでも壊れている机や椅子が無いのは、幸いなのか不幸なのか。
それが博をよりイラつかせた。
そんな時、
「力が欲しいんだ?」
そんな言葉が聞えた。
その言葉は、博の感情を逆なでしたが、今回は感情を抑える。
何故ならその声はどう考えても幼い子供の声だったからだ。
声のした方向に視線を向ける。
部室の窓枠に腰を掛けるショートカットの少女がいた。
ブラブラと宙に浮く足を揺らし、肘や膝まで短くしているゴスロリな服を着ている少女は、向けられた視線に、獰猛な笑みを浮かべる。
「やろうか?力」
そう言いながら、少女は手の中にある『注射器』を片手お手玉していた。