間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』10
★美羽★
翌日の朝。
夜衣斗さんはむすーっとする私の扱いに困りながら、一緒に登校していた。
昨日の事をまだ怒ってる……わけじゃない。そりゃまだ納得していない所はあるけど……それ以上に、私を先に帰らせといて、飛矢折さんと帰ってくるのが気に喰わない。ええ、気に喰わないですとも……だったら、待っててもよかったじゃない。
って思っててて、昨日から私はずっとむすーってしている。
それに夜衣斗さんはずーっと困ってて、春子さんもうちの両親もその私達の様子を面白そうに見ていた。
……当事者としては、ちっとも面白くないんですけど……
そう思いながら私は思わず嘆息して、後ろを歩いている夜衣斗さんを見た。
夜衣斗さんは何故か周囲を気にしながら山の方を見ている。
?
私も同じ様に周りを見ると、登校中の他の生徒の何人かが山の方を気にしているのに気付いた。
そして、山の方を見ると、物凄く嫌な予感を感じる。
……この感じは……。
「夜衣斗さん。そろそろ………はぐれが星波山で発生するかもしれません」
★夜衣斗★
昨日の放課後から喋ってくれなかった美羽さんのその言葉に、俺は目を瞬かせた。
「ちょうど前回のはぐれの発生から一週間ですし、何人かの武霊使いも山の方を気にしていますから………今回のはぐれは星波山で発生する確率が高いみたいですね………私も嫌な予感を山から感じます。夜衣斗さんも感じません?」
……確かに今朝から山の方が気になって仕方がない………なるほど、これがはぐれ発生の予感か………
「……でも………一週間の法則も最近例外が起きましたからね………」
………俺が来た時のはぐれ発生ね……………はぐれの発生………そうだ………ついでだから、色々と試してみようかな?