表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
262/471

間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』8

  ★???★

 「あの、その、助けてくれて……ありがとう」

 生徒会室を出てしばらくして、不意に楠木久思は、黒樹夜衣斗に礼を言った。

 夜衣斗は立ち止まり、久思に顔を向けるが、目が前髪で隠れている為、その顔に浮かぶ表情が分からない。

 怒っているのか、呆れているのか、さげずんでいるのか、分からなくって、久思は怖かった。

 何か言ってくれればいいが、夜衣斗は何も言わないので、うろたえてしまう。

 その久思の様子に、夜衣斗は溜め息を吐いた。

 「………降りかかった火の粉を、火元から消しただけだ……礼を言われるほどの事はしてないし、するつもりもない」

 「え?でも……」

 「………ああ言う連中はどこにでもいる。そして、ああ言う連中が狙うのは……大体決まってる………後は君の問題だ」

 「……うん。そうだね……僕も知ってるよ………転校してくる前、同じ様な目に遭ってたから………」

 その突然の独白に、夜衣斗は再び溜め息を吐いた。

 予想の範囲内の独白だったのだろう。

 「僕も君と同じ様に転校してきたんだ。少し違って進級と同時で………前の学校のいじめから逃れる為に………新しい学校なら……もしかしたら、大丈夫だと思ったんだけど………結局……どこ行っても、僕は何も変わらないや」

 そう言って自傷めいた笑みを浮かべる久思に、夜衣斗は何かを言おうとしたが、その言葉は新たに現れた少年に遮られた。

 「久思!」

 「博君……」


  ★夜衣斗★

 「わり、俺部室にこもってて気付かなくてよ。助けに行けなかった」

 「いいよ。僕の……ミスみたいなものだし……それに彼が助けてくれたから」

 不意にこちらに二人の視線が向けられ、黙って消えようとしていた俺は思わずピタリと動きを止めてしまった。

 微妙な沈黙に支配されるが、博と呼ばれた男の視線に怒りとも憎しみとも切望とも取れる感情が込めれているのに気付き………気付いたからって、どうなんだろうか?………まあ、理由はどうあれ、俺を快く思っていないのは、確かな様だ。

 何故なら、

 「何で武霊を使ってあいつらを倒さなかった!」

 っと激高した声で、俺にそんな事を言ったからだ。

 「博……」

 楠木が戸惑った様に博を見る。

 「……武霊で人を傷付けるのは禁止されている」

 「ふざけんな!あれだけであいつらがいじめを止めると思ってるのか!?」

 俺の正論に、博はある意味最もな事を言った。

 「……止まらないだろうな」

 「当たり前だ!ああ言う連中には、受けた暴力を何倍まで返さねぇとまた同じ事を繰り返す!それでいいのかよ!?」

 ………何だかな………

 博の言葉に、俺は思わずため息を吐いてしまった。

 ……なんで他人の為に、クズにクズの様な行為をしなくちゃいけない?俺に犯罪武霊使いになれって言うのかよ?

 そう思ったが口にはしなかった。

 流石にどうかと思ったからだが………代わりに、

 「……俺は正義の味方じゃない」

 っと言って、この場を後にした。

 博は何かを再び言おうとしたが、それを久思に止められていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ