間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』6
★夜衣斗★
………失敗したな………もうちょっと他の人の事を考えて………心配する人がいる事を考えて策を練るべきだったかな………
などと思いながら、俺はヒーラーサーバントに治療させられつつ、地面に正座させられていた。
俺の前には物凄く怒った表情の美羽さんと飛矢折さんがいて、無言で俺を見下ろしている。
どうも俺は昔から一人でいる事が多いせいか、他の人がどう考え思うかを二の次にして考える質がある。まあ、考えようと思えば考えられなくはないんだが………短い時間や差し迫った状況下だと、どうしてもそうなってしまって………
「夜衣斗さん」
静かで穏やかな声に、俺は何故かビクッとしてしまった。
「何でされるがままだったんですか?」
美羽さんは笑顔になってそう聞いてきたが、背後にゴゴゴゴっと擬音が付いてそうな雰囲気だった。
その隣で飛矢折さんは、溜め息を付き、
「何か思惑があってのことだと思うけど………いくら受けた傷を治せるからって、万が一って事があるんだよ。特にあんな連中の暴力なら」
そう言って、ちらっと武装風紀委員……武風って訳語があるらしい……武風に連行される不良達を見た。
……まあ、確かにそうかもしれないが……でもな……
「……あの」
不意に俺の隣で何故か同じ様に正座しながら、ヒーラーサーバントの治療を受けているいじめられていた男が口を開いた。
「お、怒らないでくれませんが………その、彼は……僕を助ける」
「分かってます!」
「え?あ!はい」
美羽さんに言葉を遮られ、直に言葉を引っ込めるいじめられていた男。
「分かってるから怒ってるんです。夜衣斗さんならもっとうまく、わざわざ暴行されなくても、助けられたでしょ!?」
また怒った顔になった美羽さんに、俺は心の中でため息を吐いた。
……どうやら説明しなくちゃいけないらしい。
「……必要だったんですよ」
「何が!?」
「無抵抗な人間が暴行されている証拠が」
★飛矢折★
黒樹君の言葉に、あたしは絶句した。
それってつまり、上空に映像を映し出したのは、助けを求める為にやったんじゃなくて、大勢の人に暴行を目撃させる為で………そう言えば、あたしの掌ていを止めた時に、退学って言ってたっけ………。
「だから、リフレクションサーバントとスカウトサーバントを使ってあんな事をしたんですが………心配させて仕舞ったみたいですね……すいません……考えが足りませんでした」
っと言って頭を下げる黒樹君に、赤井さんは戸惑った様な表情を見せ、
「えっと……その……」
顔を赤らめたしどろもどろ………可愛い……って何考えてるんだかあたしは………。