間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』2
★夜衣斗★
(十年前に建築中の学園を見た事あっただわけど………ふ〜ん。こんな風になっただわね)
っと言う美魅の声が頭の中に響く。
今、俺は放課後の星波学園の中を一人でぶらぶらしている。
いや、正確にはプラス二匹なのだが………一匹は俺の心の中で、もう一匹はステルスサーバントで姿を消さしているので、周囲からは実質一人でうろついているしか見えないだろう。
姿を消したメガネベアは俺に肩車されており、学園設備が興味深いのかきょろきょろ動いている気配がして、その落ち着きのなさに俺は思わずため息を吐いた。
今朝の事だ。
登校の準備をしていると、不意に頭の中に、
(夜衣斗はあの学園に通ってるだわよ?)
っと美魅の声が聞こえてきた。
起きたのか………サヤは?
(寝てるだわよ)
寝てるって………
(何だか物凄く疲れてるだ見たいだわよ?これはしばらく起きないだわね)
………わけわからん…………後は俺次第ね………どう言う意味だったんだろうか?………。
(そんな事より夜衣斗。あの学園の生徒だわね?)
?……まあ、そうだけど……。
(じゃあ、あたい達を案内して欲しいだわ)
案内?俺より長くこの町に住んでるのに?……ってか、あたい達?
その疑問に、いつの間にか足下に来ていたメガネベアがズボンのすそをクイクイっとした。
………なるほど。
っで、今に至る。
今日一日メガネベアをステルスサーバントで隠しながら近くに待機させ、放課後になったら一人で見て回りたいと言う俺の言葉にみんなから不思議そうな顔をされつつ、学園内を見て回っている。
なんでも美魅は武霊が発生してからほとんど住処から出た事がなく、メガネベアはつい先日この町に来たばかりらしい。
個人的には勝手に回ればいいと思うんだが………まあ、ちょっと探索してみたいと思っていたから、丁度いいと言えば丁度いいか。
こう、何と言うか、知らない場所を手探りで見て歩いて行くって言うのは、時々やると非常に面白く感じるな……。
っと思っていると、その思考を読んだのか、メガネベアが頭上で頷く気配がする。
同意しているみたいだが……………
部活・同好会の建物が乱立してる場所を探索中、ひと気のない場所に迷い込んでしまった。
………ちょっと不気味だな………
っと思って元来た道に戻ろうとした時、耳に何か鈍い音が入った。
近くだったのと、あんまり考えずに行動していた事も重なって、俺は不用意にその音のした方向に行ってしまう。
そして、俺は直にそれを後悔する事になった。
明らかな………『いじめ』の場面に………遭遇してしまったからだ。