間章その四『容疑者黒樹夜衣斗』1
★飛矢折★
「……これは昨日の約束の奴」
そう言って黒樹君は、教室にやって来た緑川君に二つの紙袋を差し出した。
「えっと……いいっすよ。結局役に立てなかったですし、それに……俺、かわいい系は苦手なんっすよ」
ちょっと困惑した様な緑川君に、黒樹君は口元を歪め、
「……一つは、見た事がある猫」
構わず続言葉を続ける黒樹君に、ますます困惑の表情を深める緑川君。
「……もう一つは、見た事がない猫……どっちがいい?」
………見た事がある猫に……見た事がない猫?……意味が分からないんだけど……
その疑問は緑川君も同じだったみたいで、言葉の意味が分からず、目を瞬かせていた。
それを見ていた村雲君が、不意に、緑川君をあたしから離れた所に連れて行き、あたしに聞えない様に内緒話をし始める。
?
……ほどなくして、
「見た事がない猫で」
っと緑川君が言って、黒樹君から一つだけ紙袋を受け取り、一礼してそのまま教室からそそくさと出て行った。
なんだかちょっとだけ挙動不審な緑川君に……………あ!……もしかして………。
「巴?何だか顔が赤いけど………黒樹君から風邪でも貰っちゃったんじゃない?」
「え!?あ!うん。っそ、そうかも」
「………?」
★夜衣斗★
………ん〜なんか飛矢折さんの反応がおかしい……バレたかな?
などと思いつつ、
「……飛矢折さん。黄道さん。昨日は……ありがとう」
「いえいえ。丁度お礼もしたかった所だったから。ね?巴」
「え!?あ!うん」
……やっぱり反応がおかしい………いや、深く考えない事にしよう。うん。そうしよう。