間章その三裏『美魅様とメガネベア』6
こそこそと商店街に戻って来たメガネベア。
美魅とは商店街の近くまで案内して貰い、そこで別れている。
商店街には………誰もいない。
あの不気味な気配も無いので、ここにいないのは間違いなく、建物の蔭から陰にサッサッサと移動しながらおもちゃ屋の前まで移動。
閉まっているおもちゃ屋のドアをすり抜け、メガネ動物達の人形があるコーナーにまで来て、クイッとメガネを上げた。
その視線の先には、メガネベアとそっくりな人形が展示されてあり、「「この人形は明日行われる『週間商店街くじ引き』にて二等として提供されます。振るってくじにお参加ください。」」っと書かれた紙が近くに貼ってあったが、文字が読めないのか、メガネベアは小首を傾げた。
(メガネベア……あれで本当に大丈夫だわね?………まあ、他のを気にかけている余裕はあたいにはないんだわよ。早く隠れる場所を見つけ…………あれは……)
メガネベアと別れ、メガネベアを心配しつつ隠れる場所を思案していると、丁度コンビニから出てくる少年の姿が視界に入った。
(なんて………これはこれは……いい場所を見つけただわよ)
そう思いついニヤリとしてしまう美魅。
片手に漫画雑誌とプリンが入ったコンビニ袋を持って歩く少年を、美魅は無言で後を付ける。
しばらく後を付けると、不意に少年が振り返った。
前髪で目が隠されている為、どこに視線が向けられているか分からないが、僅かな首の動きからして、視線を巡らしているのは間違いないだろう。
星波町にいる人間の中に、自身の身に寄生した武霊を自在に操れる武霊使いと言う者達がいる。
そんな者達の中に、妙に感がよくなる者もおり、そんな者達にはどうやら美魅が姿を消していたとしても、見えないにしても、気配か何かを感じているのを美魅は何度か経験していた。
(………このままいくより、普通の猫として近付いた方がいいかもしれないだわね?下手に姿を見せないまま近付いて、武霊で攻撃されたり、逃げられたりしたら、たたまったもんじゃないだわし)
そう思った美魅は、物陰に移動して姿を現し、少年に近付いた。
「……白い…猫?……」
美魅を見て、ぼそっと少年がそうつぶやくのを美魅は聞き、接近。
少年は近付いてきた美魅、しゃがみ込んで手を差し伸べ、美魅の頭や喉を撫でてくれる。
かなり気持ち良く、思わずごろごろしてしまう美魅だったが、
(今はそんな事をしている場合じゃないんだっただわ)
そう思った美魅は両足に力を込める。
(名も知らない少年。少しだけ、少年の『心の中に仮住まい』させて貰うだわよ)
そう思いつつ、少年の胸に向かって飛び込む美魅。