間章その三裏『美魅様とメガネベア』3
「メガネベア?まんまの名前だわね」
美魅とメガネを掛けた小さい白い熊・メガネベアは、おもちゃ屋の外にいた。
どうも同じ様な姿の人形がある場所は居心地が悪い様で、メガネベアはちらちらとおもちゃ屋を見ている。
メガネベアは、どう言うわけか知性を持っていながら喋る事が出来ない様で、代わりにテレパシー能力を持っていた。
そのテレパシーで、美魅はメガネベアがメガネベアと名乗ったのを感じたわけだが………。
「あんた何なのだわ?」
美魅のその問いに、メガネベアは小首を傾げた。
「そのまんま?……言語を持たない種族とのやりとりは厄介だわね」
コミュニケーションの難しさに溜め息を吐く美魅。
(まあ、少なくとも完全にやりとり出来ないわけじゃないだわし……)
っと思った時、誰もいない商店街に誰かが入ってくる気配がした。
その方向に視線を向けると、小学生くらいのポニーテールの女の子がこちらに向かって歩いて来ているのが見えた。その服装は肩やお腹などの所々に穴の開いたゴシックロリータな服で、それに美魅は小首を傾げたが、それ以上に、
(こんな時間にあんな小さい子がどうして?)
そう疑問に思いながら美魅は隣のメガネベアを見ると、メガネベアはクイッとメガネを上げていた。
っで、気付いた。そのメガネベアの姿が、さっきからずっと『誰にでも見える状態』だと言う事に。
「ちょっとあんた。何でずっと姿を見せたままにしているんだわよ。早く見えないようにしなさいだわよ」
その美魅の言葉に、小首を傾げるメガネベア。
「え?そんな事出来ない?じゃああんた、今までどうやって過ごしてきたんだわよ?」
その問いに再び小首を傾げるメガネベア。
「今まで必要ない所にいた?よくわかんないだわね……何にせよだわね。今はじっとしているだわよ。幸い、あんたの見た目は、じっとしていればまんま人形だわね」
美魅のその指示に、メガネベアは素直に従い、動きを止めて、人形の振りをし出す。
近付く商店街に現れた女の子。
その手には何か水晶球の様なものを持っていて、そこから脈動する淡い光が発せられており、美魅はそれに違和感を覚えた
その違和感の正体を思案する前に、女の子がおもちゃ屋の前まで来る。
その瞬間、水晶球から強い光が照射され、美魅を照らした。
光が当たった瞬間、美魅は自分の身体が外から内へと引き摺りこまれたのを感じ、全身の毛が逆立つ。
「ああ、こちらに居られましたか美魅様」
(あたしが見えてる!?)
女の子の言葉に、美魅は瞬時に警戒態勢に入る。
「お迎えに上がりました。……そちらの方も」
っと言って、にっこり笑うその視線はメガネベアにも向けられており、ビクッとメガネベアは震えた。