間章その三裏『美魅様とメガネベア』2
気ままに歩きながら美魅は、町の様子を見ていた。
なんせ町に出るのは随分と久しぶりだからだ。
武装守護霊が星波町に発生する様になって十年。
美魅の様な、人の言う妖怪などの様な存在は、星波町からほぼいなくなっている。
大体が自分達よりわけのわからない奇妙な存在・武装守護霊が発生した時に町から逃げ出し、逃げられない様なもの達は、はぐれ武装守護霊に喰われてしまったり、美魅の様に住処に引きこもっている為だ。
もっとも、そんな事が裏で起こっている事など、星波町の人間達は知る由も無い。
何故なら、美魅の様な存在は、世界の『外』の存在。
だから、普通の人間に美魅達の方が姿を見せる気にならない限り、認知する事が出来ない。
故に、今の美魅は気ままに町の中を移動している。
居間でテレビを見ている家族の前でそのテレビを見たり、一人寂しくビールを飲んでいるポニーテールの女性のビールをちょっと盗み飲んだり、空き地で項垂れている少年の頭に乗って周りを見回したり、色々と好き勝手に町を見回っていた。
(やっぱり久しぶりの外はいいもんだわね)
などと思いながら、美魅は商店街まで来ていた。
美魅が危険を冒して住処から外に出ている理由は、只単に暇だったからだ。
神社に時より参拝してい来る者達から多少は情報が得られるとはいえ、流石に十年近くも引きこもっていると、寝続けるのにも限度がある。
閉店している商店街の店の中を見て回る美魅は、おもちゃ屋に入り、
(何か面白い物はな………何だわね。あれ?)
妙なものを見付けた。
無数のメガネを掛けた動物達の人形。
それはいい。
だが、問題なのは、その並べられている人形達の前に、まるで『人形の基となったかの様なメガネを掛けたぬいぐるみの様な小さい(っと言っても一メートルぐらいの)白い熊』が、まるで人間様に二足で立ち、人形達を見て小首を傾げていた。
その気配から、美魅はそのメガネの掛けた小さい白い熊が、自分と同質か、もしくは自分以上の『何か』である事を感じていたが………こんなものは見た事も、聞いた事もなかった。
(はぐれかしら)
っとも思ったが、その割には大人し過ぎるし、たた襲ってくるだけのはぐれとは違い、知性を感じられた。
だから、美魅は、
「あんた何もんだわよ?」
っと話し掛けた。
不意に話しかけられたメガネを掛けた小さい白い熊は、美魅の方へ振り向き、小首を傾げ、クイッとメガネを上げた。