間章その三裏『美魅様とメガネベア』1
星波町の一角にある古びた神社・星波神社。
その神社には、かつて星波町に墜ちた隕石の一つが祭られている。
夏にはここを中心に星波祭りなどが行われ賑わうが、普段の星波神社は人っ子一人いない。
特に夜になると近隣付近まで誰もおらず、ある種の不気味さまで出ている。
そんな神社の隕石に、ある変化が起きた。
握り拳大の小さな隕石に、ぴょこんっと猫耳が生える。
その変化はそれだけでは止まらず、髭が、鼻が、前足がっと次々と猫のパーツが現れ、終いには隕石から一匹の猫が出てきた。
白い、非常に美しい猫で、その猫は隕石から出て直にまるで人間の様に背伸びして、猫独特を顔洗いをする。
「あーよく寝ただわよ」
っと言葉まで発し、まるで人間の様に歩き、閉まっている扉をまるで何も無いかの様にすり抜ける。
「ん〜?んー?まだあるみたいだわねぇ〜」
外に出た猫は空を見回し、溜め息を付いた。
「この町も住みにくくなったもんだわよ」
そうつぶやきながら、猫は四足歩行になって、神社の敷地から出て行った。
星波神社には、いつの頃からか一匹の猫が住んでいた。
見た事がないほどの美しい白猫で、その美しさからいつしか美魅と名付けられ、近隣住民に可愛がられる。
すると不思議な事が起きた。
美魅を可愛がった者の身に、まるでお礼と言わんばかり小さな幸運が起き続け、何故かその猫はいつまで経っても死ぬ事がなかった。
もっとも、一時姿を消す事や、姿を現すのは普通の猫以上に気まぐれな為、その猫が同じ猫かを住民は判断しかねていたが………何にせよ。その猫の存在はやがて星波町全体にまで噂になり、終には美魅様と呼ばれるまでになる。
星波町の住人は知らない。
その美魅様と呼ばれる猫が、実は本当に何十年・何百年も生き、二足歩行が出来て人語も喋れる『化け猫』だと言う事を。
まあ、もっとも、普段は普通の猫として美魅も住民も接しているのだから、それは仕方がない事だと言えなくはない。