プロローグ24
海面から飛び出した剛鬼丸は、コウリュウの進行方向上に現れた。
その胸には、しっかりと杭が食い込んでいる。
一瞬の間。
剛鬼丸は自然落下し始める直前で、一気にコウリュウの眼前へと接近した。
コウリュウは殴られる寸前に、防御鱗を展開し、拳を防ぐ。
だが、その一撃で防御鱗は粉砕されてしまう。
打撃にスピードが乗っているからだろうが……威力あり過ぎ!
防御鱗を粉砕した剛鬼丸は、そのままこちらを攻撃せず、かき消える。
周囲に光線が走っているのが見えるから、コウリュウの周囲を回っているのだろう。
その為、コウリュウは逃げる事が出来ず、残りの防御鱗を防御に展開するしかなくなった。
「これって、剛鬼丸の必勝パターンですよ!」
美羽さんがそう言うと共に、次々と防御鱗が破壊され始める。
「夜衣斗さん……」
不安そうに俺を見る美羽さん。
俺はまだそれに応えられる状況ではなく、必死に意識を保とうと足掻いていた。
緊張の沈黙。
防御鱗が壊れる音と、コウリュウの羽ばたく音。
オウキは、剛鬼丸のあまりのスピードに手も足も出ない。
ふっと何かを感じ、正面を見ると、剛鬼丸がコウリュウの背に降り立った。
いつの間にか、全ての防御鱗が破壊されている。
逃げれる距離でも、場所でもなく、美羽さんが唾を飲むのが聞こえた。
拳を振り上げる剛鬼丸。
振り下ろされるその拳は、俺達にではなく、コウリュウの背に突き刺さる。
コウリュウが凄まじい声を上げ、暴れ、振り飛ばされる美羽さんと俺。
振り飛ばされる直前に、俺は美羽さんを引き寄せ、抱き締めていたので、一緒に落下する。
抱き締めた瞬間、驚かれた気配があったが、今はそんな事を気に出来る状態じゃないし、場合でもない。
俺がオウキに命令する前に、オウキは落下する俺達を優しく受け止める。
まだ意識がもうろうとする中、上を見上げると、コウリュウがいきなり霧散した。
反射的に美羽さんを見ると、緊迫した顔をしてはいるが、平気そうだ。
「夜衣斗さん」
ずっと上を見ていた美羽さんの声に、俺も再び上を見上げると、剛鬼丸が自然落下でこちらに向かっていた。
ぎゅっと俺の服を掴む美羽さん。
俺はそれに力無い笑みを浮かべた。
美羽さんはコウリュウを失い。
俺は次の装備を出せるほど意識が回復していない。
真上に迫っている剛鬼丸。
威力を考えて、一撃で即死だろう。
だが、
それでも、
俺は、
勝利を確信していた。
「CAサーバント。ブレイク!」