間章その二『うさぎと魔人』27
★飛矢折★
「……巴……」
「ん?」
久しぶりに二人でお喋りして、日が暮れたから帰ろうとした時、不意に美幸が意味深な笑みを浮かべてあたしを呼び止めた。
「黒樹君が気になってるでしょ?」
その言葉に心臓が跳ね上がった。
「……そ、そんなわけ」
「あるでしょ?……うふふ。そっか、巴もようやく女の子になってくれたかぁ〜」
「あたしは最初っから女です!」
「あははは」
……話の内容は困ったものだけど、楽しそうに美幸が笑ってるから………っま、いいか………
「明日は学校に来るよね美幸」
「うん。勿論よ巴」
★???★
武霊の私闘が行われた空き地で、日が暮れたと言うのに未だに膝を付いて項垂れている緑川響。
ぴっくりとも動かず、背後からは心配そうに具現化していないイフリートが出ている。
その空き地に隣接する道路に源さんが通り、響に気付いて少しだけ立ち止まり、首を傾げて歩き出した。
その時、不意に響が顔を上げ、源さんがビクッとする。
「よぉーーーーーーし!決めたっすぅぅうぅぅ!!」
物凄い大声を上げたので、近所の犬が同調して吠えだし、近所迷惑この上ない。
っす。っす大声で言っている響に源さんは再び首を傾げつつ、空き地を通り過ぎた。
「上手くいかないものね………」
「相手が響だったからな……まあ、しつこさだけで嫌になる人間じゃないだろ」
「でも………」
「中途半端な意志じゃ関わりを断てない」
「……私は……」
「なるべくしてなるし、入るべくしてはいる………結局、逃れられないってことだろう」
「……でも……」
「最悪は始まる前に俺が何とかする」
「あなただけに負担を掛けるわけには」
「……それは、あきらめた人間のセリフじゃないな」
「………ごめんなさい」
「いいさ。これが俺の運命なんだろうからな。逃れられないなら、立ち向かう。例え一人でも………そう誓ってる」
「……………」