間章その二『うさぎと魔人』24
★美羽★
飛矢折巴さんが黄道先輩から離れた。
夜衣斗さん曰く、「黄道さんの武霊が黄道さんの命令を聞かないのは、黄道さんとその武霊の間にずれが生じていて、言葉が直接通じなくなっている………人と動物の関係に近くなっている可能性が考えられます……もしそれが合っているなら、人が飼っている動物を躾ける様にすれば……もしくは………」
要するに、
飛矢折巴さんに殴り掛かる黄道先輩の武霊。
反射的に具現化して止めようとするコウリュウを止める私の前で、
「ゆきちゃん駄目!」
自身の武霊の前に飛び出す黄道先輩。
振り下ろされた拳が………黄道先輩の顔の前でピタリと止まった。
「もういいんだよ………もう……私は大丈夫だから……」
そう言う黄道先輩の顔を、黄道先輩の武霊はじ〜っと見詰め………
「……うん……まだ怖いよ………でも、大丈夫………大丈夫よ」
……多分、黄道先輩は自分の武霊に微笑みかけたんだと思う。
黄道先輩の武霊………ゆきちゃんは、ちらっと飛矢折巴さんと私を見て………美幸先輩に頬擦り寄せ、ポンと音を発てて腕で抱えられるぐらいの大きさになった。
そして、美幸先輩の胸元に飛び込んで、抱かれる。
「……こんな簡単な事だったんだね……私………どうしたらいいかわかんなくって……きっとそれが私をどんどん駄目にしてちゃってたんだね」
美幸先輩はゆきちゃんを抱えたまま、振り返って私達に泣きそうだけど嬉しそうな微笑みを見せた。
「………ありがとう……巴。美羽ちゃん」