間章その二『うさぎと魔人』19
★夜衣斗★
突如として起ったイフリートの爆発に吹き飛ばされるオウキ。
ウイングブースターをフルに使って姿勢を安定させたオウキは、不意に地面に視線を向けた。
来たか!
俺はすぐさまオウキが向けた視線の先のシールドサーバントのシールドを一時解除させる。
それとほぼ同時に、白い何かが下から現れ、オウキを蹴り飛ばし、再び張ったシールドの上に着地した。
「あ〜なるほど、ゆきちゃんの為に用意したのね」
「黄道先輩の武霊!なんで!?」
感心する団長に、驚く緑川。
そのすぐ後に、町内放送が始まった。
「これより、自警団団長幸野美春立ち会いの、武霊バトルを始めます。対戦相手は、黒樹夜衣斗の武霊オウキ。緑川響の武霊イフリート。横道美幸の武霊ゆきちゃんです」
「え!え?マジっすか!?」
更に驚いて俺を見る緑川を無視して、俺はオウキに二体から集中攻撃を受ける様に逃げ回る様に命令した。
………さって、後は………
★美羽★
飛矢折巴さんの呼び掛けに、黄道先輩………実はちょっと苦手なんだよね……は、応えなかった。
「巴………」
ノックした手のまま、飛矢折巴さんは固まっていた。
外では爆音が続いている。
………あんまりもたもたしていられないんと思うだけど………いくら夜衣斗さんだって、『襲い掛かってくる武霊を守りながら、響のイフリートと戦うのは難しい』………っと思う。
迂闊に黄道先輩の武霊を倒したら、武霊が消滅するって可能性があるなら、きっと夜衣斗さんは黄道先輩の武霊を絶対に倒さない。
だから、急がないと、夜衣斗さんはどんどん無理をし始める。
夜衣斗さんって結構無茶する人みたいだから………度々意識を失うような武霊の使い方ってあんまり良くないって言うし……………。
私は少し考えて、
「コウリュウ」
私と同じぐらいの大きさでコウリュウを具現化させた。
驚く飛矢折巴さんと黄道先輩のお母さんを無視して、
「そこの扉を壊して」
っと命令した。
二人が止める言葉を言う前に、コウリュウは扉をめくる様に壊す。
扉の無くなったボロボロの部屋のベットの上で、毛布を頭から被って膝を抱えて呆然と私を見ている黄道先輩に、私は笑顔をコウリュウ越しに向けた。
「おひさしぶりです黄道先輩」