間章その二『うさぎと魔人』12
★飛矢折★
………みんな、妙に黒樹君に期待を寄せている気がする…………確かに、黒樹君の武霊は普通の武霊とは全然違うみたいだけど……でも、彼自身は普通の男の子だよ?
そんな思いを抱いたけど、口に出せなかった。
「……現状で出来る事は限られているでしょう」
それまで黙っていた黒樹君が、不意に口を開いたからだ。
「……半はぐれ化について何も分かっていない今出来る事は、状況状況でその場で対応する事。ですから………飛矢折さん」
また不意にあたしを見たので、あたしはちょっとびっくりした。
「うん。なに?」
「何で黄道さんのお母さんは、なんで自警団に相談しなかったんですか?」
「……美幸が嫌がったんだって………その……半はぐれ化を起こしている事が知られたら……あたしへの非難が声が強くなるって」
「……………そう言う事は、もっと早くに言ってくれませんか?」
「うん?」
「……まあ、ここにいるメンバーが話を広めるとは思いませんが……」
そうぼそっと言う黒樹君の声に、この場にいる黒樹君以外が顔を見合わせた。
………黒樹君も、美幸もそうだけど……あたしの事を心配し過ぎ………例え、非難の声が強くなっても……あたしは平気なのに………でも、その心配は、嬉しいかな………あたしの周りに、あたしの事を心配してくれる人ってあんまりいないから………。
「………何にせよ。行動するなら早い方がいいでしょう。そんな事を言っていた黄道さんの言葉を無視して、お母さんが飛矢折さんに助けを求めたって事は、何らかの限界を迎えつつあるって事でしょうから………飛矢折さん。今日の放課後は大丈夫ですか?」
「え?……あ、うん。大丈夫だけど………」
ちらっと他の人達を見ると、
「俺はわりぃが無理だな」
っと村雲君。
「私は平気ですよ」
っと赤井さん。
「あらあら?私は無理かな?」
っと妙な、何か企んでそうな笑みを浮かべる青葉さん。
………なんか、嫌な予感がしないでも………。
「……それにしても」
不意に村雲君が面白そうな笑みを浮かべて、黒樹君を見た。
「普通に喋れるじゃん。黒樹」
そう言われた黒樹君は、やや困った雰囲気になった。