間章その二『うさぎと魔人』10
★飛矢折★
黒樹君の協力が確約出来て、あたしはほっとした。
黒樹君の性格からして………断る事はないと思ってたけど、それでも結構緊張してたみたいで、普段なら鋭敏に感じている周りの気配がそれまで鈍っていた事に気付いて………黒樹君に向かってあたしは自分の口に人差し指を当てた。
そして、気配を消して、屋上の扉に近付き、素早く扉を開けた。
「っきゃ!」
っと言って赤井さんが転がり出てきた。
………耳に手を当てて、座り込んで扉に体重を預けていたから………間違いなく盗み聞きをしていたんだろうと思うけど…………緊張してたからって、こんなに近くで盗み聞きしている人の気配に気付かないなんて………あたしもまだまだ未熟ね………。
「………何をしてるんですか美羽さん?」
っと言って、ちょっと躊躇しながら手を差し伸べる黒樹君。
………名前で呼ぶのね………黒樹君ぽくないけど……赤井さんが言わせているのかな?
「えっと……お母さんに、夜衣斗さんの分のお弁当を作って貰ってて………それで……」
とか言いながら、黒樹君に助け起こされる赤井さん。
「……聞いてないんですけど、そんな話」
呆れて溜め息を吐く黒樹君。
「えっと、えへへ。ちょっと驚かせよと思って……」
再び溜め息を吐いた黒樹君は、
「………まあ、でも、ちょうど良かったです。美羽さんにも協力して貰おうと思ってましたから」
っと言ったので、
思わず、
「「え!?」」
っと驚きの声を出していて、同じ様に驚きの声を出していた赤井さんと目を合わせてしまった。