間章その二『うさぎと魔人』8
★飛矢折★
「押忍。黒樹先輩。今度こそ武霊勝負をお願いしたいっす。押忍」
教室に入って来た緑川響君は、座っている黒樹君に近付き、頭を下げた。
「……………」
黒樹君は……物凄く困った雰囲気を醸し出している。
そうだよね………黒樹君は、基本的に暴力とか好きそうな感じがしないし……。
「よう響。停学とけたんだな」
「押忍。村雲先輩」
黒樹君しか見てなかったのか、村雲君に声を掛けられ、ちょっと驚いた感じで挨拶する緑川君。
「ここ、村雲先輩のクラスだった………すね」
何だか微妙な空気になる。
?特に村雲君は何ともないみたいだけど………
「村雲先輩とは、一度戦ってみたかったっすけど………残念っす」
………ああ、そう言う事か………彼って、重度のバトルマニアだって話だし………。
「まったく……お前ってやつは………」
緑川君の言動に呆れた感じで溜め息を吐く村雲君は、黒樹君に視線を移して、
「黒樹。こいつはこう言う奴だからよ。一度、本気で相手をしてやってくれないか?」
っと言った。
「ってか、こいつ、戦ってくれるまでしつこいぞ」
そう言われ、ますます困った雰囲気になる黒樹君。
ん〜ここはあたしの出番かな?
「緑川君。とりあえず、今は帰った方がいいと思うよ」
不意にあたしが声を掛けたせいか、それともあたしの存在に気付いていなかったのか、緑川君があたしを見て、びくっと身体を震わした。
………?
「そろそろ朝のホームルームが始まるから」
「っそっそっそうっすね。っまっまっまた出直してくるっす」
妙に声を震わして、逃げる様に緑川君が教室から出て行った。
………何なの?
唖然としていると、不意に村雲君が声を殺して笑いだした。
疑問の視線を渡ってる村雲君に向けると、村雲君は、
「まあ、忘れてるのも無理ねえかもしれねぇけどよ。あいつ、飛矢折の最初の犠牲者だぜ?」
……………あ!そう言えば、事件の後に最初に反射で倒したのって、偶然鉢合わせた武霊使い同士で喧嘩している武霊使いだった………パニックを起こして、気が付いたら全員気絶させていたから、全員の顔を見てなかったけど………そう言えば、あれで喧嘩していた事が発覚して、武霊使いが何人か停学になったって聞いたけど………まさか、その一人が彼だったなんて………妙な縁もあるものね………
「よかったじゃねぇか黒樹。いい緑川避けが出来たぜ?」
………緑川避けって………まあ、いいけど………丁度、黒樹君に相談したい事があったし………。