間章その二『うさぎと魔人』7
★???★
薄暗い部室の中で、女性の引き裂くような悲鳴が聞こえる。
それも何度も何度も、テーブルに置かれた星電から。
「あらあら?はいはぁ〜い。今出ますよぉ〜」
そう言って携帯を取る青葉愛。
どんでもないセンスの持ち主だが、その美貌はどこか令嬢を思い起こさせる為、学園内でそれなりの人気がある。
学園内で密かに付けられているランキングなどにも上位へ常に入っているほどなのだが、実際によって来る男はほぼいない。いたとしても、彼女のスプラッターホラーな趣味に付いていけず、顔面蒼白で泣きながら彼女から離れて行く。
誰が掛けてきたか確認すると愛は苦笑した。
そろそろ掛かってくるころだと思ってた相手からだったからだ。
「あらあら?おはよう美羽ちゃん」
「おはよう美羽ちゃんじゃないです!」
星電から聞こえてくる怒った美羽の声に、愛は苦笑した。
あまりにも予想通りの反応だからだ。
「愛部長でしょ!?響に夜衣斗さんの事を教えたのは!」
「あらあら?ピンポーーン。大正」
「解じゃありません!」
「あらあら?いいじゃない。どうせいつかは知る事なんだし。だったら早い方がいいでしょ?」
「何言ってるんですか!?夜衣斗さんは星波町に来てからずっと慌ただしい日々を過ごしてるんですよ!?それがようやく終わったと思ったら……今度はあの馬鹿ですよ!?」
「あらあら?別にいいじゃない。黒樹君って、普通の武霊使いより意志力の回復が早いんでしょ?」
「回復が早いからって……」
「それに美羽ちゃん。黒樹君に色々と伏せたまま内の部のいい所だけ見せようとしてたでしょ?」
「っう!どうしてそれを」
「ふっふっふ。美羽ちゃんの考えている事なら、何でも分かるわよ。駄目よぉ〜。真実の隠ぺいは嘘と同じなんだからぁ〜。嘘は泥棒の始まり。っめ!」
「………」
ため息が星電から聞えた。
「それに、かわいそうでしょ?」
「もういいです………失礼します」
「うん。またね」
笑顔で通話の終わった星電を制服にしまい、そして、不意に暗い表情になった。
「そう……かわいそうでしょ?だって………」