プロローグ21
俺の話した作戦に、美羽さんは、特に疑問を口にする事も無く、
「はい。分かりました」
と言ってくれた。あの笑顔でだ。
ちょっとは否定されるかと思ったんだが………。
普通、初めて会った人間をここまで信じられるか?………この人……馬鹿なんじゃ……まあ、こう言う馬鹿なら嫌いじゃない。むしろ、素直に好感を持てる……こんな事は、多分、生まれて初めてだ……だから、俺も、その信頼に、絶対に答えなくちゃいけない。
だろ!オウキ!
俺の心の呼び掛けに、並行飛行しているオウキが力強く頷いた。
そして、俺は『準備』を始めた。
「お願い。コウリュウ!」
美羽さんの命令に、それまでばらばらに剛鬼丸をかく乱していたコウリュウの防御鱗が、一斉に集まり、剛鬼丸の行く手を遮った。
その瞬間、剛鬼丸は全身の鎧を開いた。
「オウキ。セレクト。接着弾。狙撃銃」
俺の命令に、オウキの右脇が開き、そこから長大な狙撃銃が現れる。
必殺の閃光を放つ剛鬼丸。
全ての防御鱗が消滅し、剛鬼丸の鎧が閉まるその瞬間、「撃て!」、オウキは狙撃銃を撃った。
弾丸は狙い違わず、閉まる鎧の隙間を通って、剛鬼丸の胸に着弾し、鎧は完全に閉まる。
剛鬼丸は弾丸が当たった事も気にせず、こちらに向かってくる。
「コウリュウ。防御鱗二十枚!」
美羽さんは、さっきの二倍の防御鱗を出し、剛鬼丸の進行を、必殺の閃光を使わせない程度の距離で、かく乱させる。
「夜衣斗さん。大丈夫ですか?」
心配そうに美羽さんが声を掛けてきたが、俺は返事をする事が出来なかった。
眠気とは違う意識の薄れに必死に耐えていたからだ。
「具現化のし過ぎですね。まだ、時間稼ぎは出来ますから、少し休んでて下さい」
そう言う美羽さんも、どこか辛そうだ。
何とかしたくても、何ともしようもなく………歯痒かった。