第二章『カウントする悪魔』82
★夜衣斗★
星波学園に向かいながら、俺は昨日の最後の敵との会話を思い出していた。
「最後にこれだけは教えておこう。明日、自警団から都雅が行方不明になったと話が来ると思うが、少なくとも、もう二度と君の前に姿を現す事はないから安心してくれ」
………それって、死んでるって事か?
「いや………とりあえず生きてはいるだろう」
……サンプルとしてか?
「………」
沈黙は肯定として受け取るからな?
「………」
あの状況から考えて、都雅に剣を突き刺してはぐれ化を起こさせた武霊使いは、都雅を脱獄させて強化した連中なんだろ?口封じ兼実験体の回収って所か?
「………」
………まあ、何にせよ。はぐれ化も起こしたし、あれだけの効果を発揮する薬を使ったんだ。副作用とかで死なないにしても、それに近い状態になってるんじゃないのか?
「可能性はある」
……………まあ、いいけどさ………だが、そうなると、疑問に思う事が一つある。
「大原亮の事か?」
……まあ、そうだが……これは答えてくれるわけか……
「……大原亮は、今回の件に直接関係はない」
関係は無い?都雅の武霊を奪っておいて?
「大原亮はある目的の為に、強力な武霊を奪い回っているに過ぎない。都雅もその過程の一つだっただけの話だ」
って事は、俺と飛矢折さんは結果的に都雅の武霊を奪う為に利用されて、俺はついでに武霊を奪われ掛けた。って事か?
「………」
?………なんでここで沈黙?……それだけじゃないって事か?
「………」
なるほど、俺が知ると困る情報か………当然、その目的って奴も教えてくれないわけだよな?
「……大原亮は」
ん?
「主人公だよ。僕や君の様な紛い物の主人公と違ってね」
…………はぁあ?
「また、連絡する」
おい!それってどう言う意味………切りやがった。
………一体どう言う意味だったんだろうか?
主人公……ね。っで、俺や自称最後の敵が紛い物。
そうなると、何となく想像が付くな………大原亮は、俺と最後の敵同様に、宿命の悪意と
「黒樹君?」
不意に隣を歩いていた飛矢折さんに話し掛けられ、思考を中断された。
「もうそろそろ着くよ?」
確かにいつの間にか学園大門近くまで来ていてた。
っで、学園大門の前には……………
俺は確認の為に、飛矢折さんを見た。
「本当にやるんですか?」
「勿論」
「……ですが」
「言ったでしょ?これはお礼だから、気にしない」
「………」
そう言って微笑む飛矢折さんに、俺は溜め息を吐くしかなかった。
きっと飛矢折さんは、一度言い出したらよっぽどの事がない限り止めない人なんだろう。
そう思ったからだ。