第二章『カウントする悪魔』80
★???★
対峙して分かった。
あの女を庇う男は、自分に近い存在だと。
だから、再び負けそうになった時、挑発した。
思惑以上にその挑発に男が乗ったので、命を落とし掛け、それに理性が歓喜したが、結局はあの女に邪魔された。
馬鹿な女だと思いつつ、その瞬間を逃さないで、あの注射器を使った。
それが打てば膨大な意志力が手に入るとか、それ以外の効果・副作用があるとか、考えないでもなかったが、どうでもよかった。
本能が、それを使えと言っていたからだ。
理性も、それを使わないとまた捕まると言っていた。
だから、迷わず使った。
そして…………………………………………
ブルースターの武霊強奪能力の反作用により見させられていた都雅の記憶が、唐突に歪み、大原亮は記憶の夢から叩き起こされた。
奪った武霊が一体だけなら多少の余裕はあるので、恋人のアパートに戻り、ベットで反作用を起こさせたのだが………。
都雅が注射器を使った瞬間から、まるで精神構造が別物にでもなったかの様になり、見る事が出来なくなった。
だが、十分過ぎるほど見させられたので、亮の服は汗でぐっしょりと濡れており、ベットに脇では心配そうに竜子が亮を見ている。
(くそ!『あいつら』、あんなものまで作っていたのか………もっと早く、もっと力を集めないと………)
そう思いつつ、心配無いと朝子に向かって亮は笑みを浮かべていた。
★夜衣斗★
翌朝。日曜日だが、逆鬼ごっこは行われるとの事なので、俺は学園に行く準備をした。
休んでもいいと連絡があったが………何でも日曜日の逆鬼ごっこは、鬼側が自由に開始時間を決めていいらしい。だから、それを上手く利用しない手はないし、体調も万全じゃないが、オウキの具現化に支障がある程ではない………多分………。
……さて、いつ行こうかな?
っと考えていると、不意にドアがノックされた。
………美羽さんか?………春子さんはノックなんかせずに入って来るし………。
とりあえず身なりをチェックして………まあ、平気かな……鏡があればいいんだが……ない物はしかたがないか……。
「どうぞ」
ドアが開き、美羽さんと………何故か飛矢折さんが入って来た。
へ!?………何で?