第二章『カウントする悪魔』78
★???★
自分の本能に身を任せるだけでは、本能が満足する結果にはならない。
だが、理性に身を任せるだけでは、理性がそれを否定する。
だから、本能が満足する理性的な過程を考える必要あった。
そして、警察が自分を疑い出す前に、家を出て、町から町へと転々としながら、色々と試した。
男を監禁しては、徐々に拷問。
子供を誘拐しては、部分部分を親に送り。
老人を痛めつけては、それをネットに公開。
いくつも試した。
ありとあらゆる犯罪を試した。
考え付く限りの犯罪を試した。
その中で最も本能が満足し、理性が否定しなかったのが、酷く安直な婦女暴行だった。
それ自体を理性は全否定しなかったが、完全な肯定と言うわけでもなく、本能が完全に満足するには時間がかかり過ぎる手段だったが、それ以外の方法だと、何も壊す事が出来ずに終わる、最悪の結果になりかねなかった。
だから、それしかなかった。
そう決めて、実際にそれを行おうとした時、偶然結構場所として選んだ町で………武霊に出会った。
歓喜した!
歓喜した!
これこそが、求めても、望んでも、ありえないと想像していた世界の下地。
ここを壊せば、真に本能が満足する。
そう理性が歓喜した。
そして、手に入れた。
クラッシュデビルを。
だが、生じたばかりのクラッシュデビルはそれほど強くなく、それでも壊すのに支障はなかったので、行動を起こした。
そして、あの女をターゲットにしてしまい………捕まってしまった。
★夜衣斗★
「都雅の自宅を調べた警察の資料によると、都雅の自室には隠された状態で悪魔に関する本がいくつかあり、ネットの履歴を調べると同様の所へのアクセスが集中していた様だ」
………それで、あの武霊か………だが、そんなに強くなかったんだろ?最初は
「ああ、都雅自身もその事に気付いていたのか、暴行された被害者女性は全員、武霊使いじゃない。意図的に普通の人間を狙ったと考えるのは自然だろう」
っで、運悪く飛矢折さんをターゲットに選んでしまった。
「そう、彼女の親友の武霊によりあっさりと倒され、星波警察に捕まった。これで、都雅の犯罪は止まるはずだった」
だが、止まらなかった………星波警察署の留置所ってのは、捕まった犯罪武霊使いを簡単に逃すほど緩い警備なのか?
「いや、そう言うわけではない。留置所には、武霊の具現化を抑える武霊の力が働いている。普通の人間に戻った武霊使いが一人で逃げ出せる場所ではない」
だから、あんたの運命の敵が、都雅を脱獄させたわけか………っで、何かを都雅にあの注射器を渡し、その中に入ってた何かでレベル1の武霊使いをレベル3の武霊使いにし、異常な意志力を持たせたって事か。………どうせ見ていたんだろ?……あれはいったい何なんだ?