プロローグ2
★???★
それは生じた時から腹を空かしていた。
しかし、それの周囲には何もない。
あるのは先の見えない闇と、自身を拘束する見えない鎖。
それは空腹からもがくが、鎖はとれず、逆に体に食い込み、苦しくなる。
少しずつ、空腹より、恐怖がそれを支配し始めた。
恐怖の浸食と共に、それはますます暴れたが、その度に鎖はますます食い込み、終には暴れる事すら出来なくなる。
それはやがて恐怖より、怒りを感じるようになった。
身を焦がすほどの怒り。
どれほどのその怒りに身を焦がしていたか、ある時、不意に鎖が千切れ、闇が開けた。
開けた視界に、町が見えた。
それはそれに疑問を思うことなく、突然の自由に喚起する事なく、それの周囲にそれと全く同じ姿形をしたものが無数に存在する事すら気にすることなく、自身の怒りに身を任せて走り出した。
それと同時に、けたたましいサイレンが町中から聞こえ始める。
★主人公★
「………」
「いや〜ごめんね夜衣斗ちゃん。お姉さんすっかり忘れていたわ」
「………」
「ここ最近、締め切りに追われててね。多分、それで忘れちゃったんだわ」
「………」
「しかも、今現在も追われている最中でね。お迎えに行けないのよ」
「………」
「そんな訳だから、自力で家まで来てね。住所は知ってるでしょ?」
「………」
「あ!来る途中でプリン買ってきてくれると嬉しいな。でっかい奴ね」
「………」
「それじゃあねぇー」
………なんじゃそりゃ!!!!
母親の話では駅で叔母が待っているって聞いていたのに、行ってみたら誰もいないので電話してみたらこれだ。
怒りより………疲れが出てきて、俺は深い溜め息を吐いた。
とりあえず、駅前のコンビニででっかいプリンを二つ買う。
面識はないんだが、叔母はかなり適当な性格だと聞いていたので、まあ、これぐらいは予想の範囲内だと言えなくないが………まあ、予測の範囲内でも怒りが込み上げてくるのは抑えられはしない。
もう一回、深い溜め息。
まあ、携帯とかで地図を見れば、何とかなるか。
そう思って俺は叔母の家に向かって歩き出した。
歩きつつ、これから住む町の様子を見る。
まあ、普通の町かな?当たり前だが。
などと思っていると、奇妙な光景が視界に入り、思わず歩みを止めた。
スピーカーだ。
それも、電信柱に一本一本あると言っていいほどスピーカーがある。
……港町だからか?津波対策とかそんなんで………それにしては過剰なほどある様な……あれか所謂、役所の無駄使いって奴か?
そんな事を考えていると………不意にスピーカーからけたたましいサイレン音が流れ出した。