第二章『カウントする悪魔』72
★飛矢折★
何だったのあの男……
炎が消えた後には、あの男の姿はどこにもなく、人型の竜も霧散して消えた。
実力的にはあたしの方が勝っていた。……でも、勝てなかった。
何かの力に、武霊の力に守られていた事は間違いなかっただろうけど……………だから、武霊って好きになれない。
あたしがそう思った時、不意にPSサーバントから乾いた制服姿に戻った。
驚いて黒樹君を見ると、黒樹君は横になって倒れていた。
慌てて駆け寄ろうとした時、あたしがいる向い側に、琴野統合生徒会長の武霊が降り立ち………
赤井美羽が降りてきて、あたしに気付き、立ち止まってあたしを見た。
なんだかどんな表情をしていいのか分からない顔をしていたけど………きっとあたしも同じ顔をしている。
そんな気がした。
★美羽★
ヒノカが廃倉庫の上に来たと同時に、ブルースターが霧散した。
慌てて下を見ると、亮お兄ちゃんの姿はどこにもなくて、代わりに横になって倒れている夜衣斗さんが見つかり、
「降ろして琴野!早く!!」
私の切羽詰まった声に、琴野は文句も言わずにヒノカを直に地面に着地させてくれた。
ヒノカの背中から飛び降りて、急いで夜衣斗さんの所に駆け寄ろうとして………気付いた。
飛矢折巴が私を見ている事に。
私と同じ様に夜衣斗さんの所に駆け寄ろうとして、私に気付いて立ち止まっているみたいだった。
なんだかどんな表情をしていいのか分からない顔をしているけど………きっと私も同じ顔をしている。
そんな気がした。