第二章『カウントする悪魔』69
★飛矢折★
廃倉庫の急いで戻ると、団長の武霊・コロ丸は、大量に作った毛の刃の一部を同じ毛の刃で切り離していた。
切り離された毛は瞬時に四散して、霧散した。
多分、あいつの武霊・クラッシュデビルだっけ?……そう言えば、何で黒樹君はクラッシュデビルの名前を知ってたんだろう?……の拳を受け止めた毛の刃を破壊が全身に及ぶ前に切ったんだと思う。
………あの右拳を何とかしないと………
そう判断したあたしは、
「PSサーバント!左手銃」
と言って左手に拳銃を出現させた。
………まさか生きている内に銃を使う事になるなんて……思いもしなかったな……
そう思いながら、クラッシュデビルに銃を向けると、あたしの目に、映画とかで見た事があるターゲットサイトが現れる。それ所か、あたしが狙いたい場所に、右腕が勝手に微調整し始めた。
PSサーバントが照準補正をしてくれるんだと思うんだけど………身体が勝手に動くのはちょっと気味が悪い。でも、今はそんな事を言っている場合じゃない。
トリガーを引くと、軽い反動と共に弾丸が射出され、クラッシュデビルの頭部に弾丸が……当たらなかった。
直前で、クラッシュデビルが右手で防御したからだ。
でも、その隙をコロ丸は逃がさず、残った毛の刃をクラッシュデビルに突き刺す。
無数の毛の刃を身体に突き刺されたクラッシュデビルが叫び声を上げ、コロ丸に向かって手刀を放つ。
コロ丸は自身の毛の刃で手刀を防御。
直に防御した毛の刃を切り、全身破壊を防ぎ、クラッシュデビルから離れる。
追い縋るクラッシュデビルは、コロ丸に手を伸ばす。
その間あたしは、拳銃をしまい、クラッシュデビルの横に移動し、「PSサーバント!右手刀」っと小声で命令し、右手手首に刀の柄を出現させていた。
後ろ向きに逃げるコロ丸より、追い縋るクラッシュデビルの方が僅かに早かった見たいで、その右手がコロ丸に迫る。
再び毛の刃でその右手を受け止め、斬るが、クラッシュデビルの勢いは殺せていない。
でも、それで一瞬だけ、動きが鈍った。
その一瞬だけで、今のあたしには、十分!
足に力を込め、人間の限界を超えた速度でクラッシュデビルの横を通り過ぎる。
クラッシュデビルとあたしが最も近付いた刹那、あたしは居合斬りを放っていた。
通り過ぎたあたしに反応して、右拳をあたしに向けて振ろうとするクラッシュデビルけど、身体だけが反転し、その勢いで根元から腕が取れ、地面に落ちる前に霧散する。
破壊の範囲は、手首から上に限定されているのを散々見てきた。だから、その範囲外である腕の付け根を狙って居合斬りを放っていた。
これで、クラッシュデビルの戦闘力は半分以下。
後は、
「団長さん!」
あたしの呼び掛けに、驚きの表情であたしを見ていた団長は最大の好機に気付き、
「コロ丸!」
攻撃の指示を出す。
攻撃指示を出されたコロ丸がクラッシュデビルに飛び掛かる。
その攻撃を高く飛び上がり、残った腕で天井を壊して逃げるクラッシュデビル。
あたしもコロ丸もクラッシュデビルを追って飛ぶ。
その際にあたしはコロ丸に視線を向けると、コロ丸は自分の背中に視線を向けた。
踏み台になるって事?
あたしはそのコロ丸の視線をそう判断した。
実際にコロ丸の跳躍はクラッシュデビルに襲い掛かるには少し足らなかった。
PSサーバントには飛ぶ機能もあるみたいだけど、そっちよりコロ丸を足場にして勢いを付けた方が良さそうだったので、遠慮なくコロ丸の背中に乗り、止めの居合斬りを放とうとした瞬間、不意にクラッシュデビルの背後に巨大な青い人型の竜が現れた。
悪寒を感じ、反射的に居合斬りを止めるのと同時に、クラッシュデビルがその竜に丸飲みされた。
……危なかった。あのまま斬りかかってたら、一緒に飲み込まれていたタイミングだった。
クラッシュデビルを倒したって事は、味方?
そう考えならあたしは、落下するコロ丸の背中に乗ったまま、廃倉庫中に着地する。
それと同時に、何かがコロ丸に体当たりしてきた。
バランスを崩す前に、コロ丸の背中から飛び降りて、団長の近くに着地。
コロ丸に体当たりした何かを確認すると、『掛け軸とかに描いてありそうな龍』だった。
何!何なの!?
竜と龍の二体の武霊の唐突な出現に、戸惑うあたしを前に、コロ丸に牙を立てようとする龍。
「不味い!亮の奴、夜衣斗も狙ってるのか!?」
「え!?」
団長の言葉に驚いて団長を見ると、団長は戦うコロ丸に視線を向けていなくて、上空でどこかを見下ろしている竜に向けられていた。
「飛矢折だったな!」
「え?あ!はい」
「早く夜衣斗の所へ!」
「え?え!?」
「夜衣斗の武霊が奪われる!」