第二章『カウントする悪魔』68
★夜衣斗★
「今度はあたしが黒樹君を守る番だよ」
そう言った飛矢折さんは、止める間もなく、俺の前から掻き消えた。
……もう俺よりPSサーバントを使いこなしているし……身体能力の差か?……いや、そんな事より、二人を支援する何かを具現化………!?
サーバントを具現化しようとして、不意に俺の視界が歪み、ふらつき、膝を地面に付けてしまった。
………一時意識を失ってた問いは言え、オーバードライブモードを限界近くまで使っている上に、都雅と戦う為にソードサーバント・二丁拳銃・そのマガジンの連続の具現化。いくら回復が他の武霊使いより早くても……無理し過ぎたか……このままじゃ、クラッシュデビルと戦いに行った飛矢折さんのPSサーバントも維持できないな……。
そう思った俺は、飛矢折さんのPSサーバント以外の具現化を止めた。
……お?……少し楽になった……かな?
だが、それでも立ち上がるほどに意志力が回復していないので、俺は物陰に座り込む。
戦いの音が廃倉庫から聞こえ出す。
……それにしても……何だったんだあの剣は………まあ、今考えても仕方がないか………どうせ何も分からない………なら、今できる事をしないと………
俺はそう思って、制服の内ポケットから星電を取り出そうとした時、近くに人の気配を感じ、反射的にその方向に視線を向けた。
知らない男がいつの間にか俺の近くに来ており、俺を見下ろしている。
……なんだ?誰だ?
「初めまして黒樹夜衣斗」
……またこのパターンか……
「俺は大原亮」
!!?大原!?確か美羽さんが見ていた家の表札の……????なんだ?何なんだ?このタイミングで?
その時、さっきまでいた廃倉庫の天井が破れ、そこから片腕を無くしたクラッシュデビル・所々毛が短くなったコロ丸・刀を持った飛矢折さんが飛び出してきた。
コロ丸の背中を足場に、飛矢折さんが止めを刺そうとした瞬間、何もない空間に巨大な青い人型のドラゴンが現れ………クラッシュデビルを丸飲みにした!!?
状況から考えて、あの青い人形のドラゴンは大原亮の武霊なんだろうが………何なんだこいつ!ってか、助けに来るならもっと早くに来いよな!
怒りの視線を大原亮に向けると、大原は俺をしっかりと見て、こう言った。
「君の武霊を貰いに来た」
………な!!?