プロローグ19
「ですから、今から私の知っている限りの剛鬼丸の能力を教えます。オウキでどうにか出来るか考えてくれませんか?……もしかしたら、オウキの能力で剛鬼丸に対抗できるかもしれませんし」
……そう言われてもな……まあ、結構色々と考えてるから……どうにか出来るかもしれないが……正直、こう言う事態を俺が収拾すると言う想像は………出来ないな。都合のいい妄想なら嫌でも出てくるんだが……。
俺がそうごちゃごちゃ考えていると、背後で強烈な閃光が生じた。
剛鬼丸があの必殺の閃光を放ったんだろう。
閃光に目を背ける赤井さん。
「防御鱗十枚」
赤井さんが再びコウリュウの鱗を飛ばした。
その際に、赤井さんの頭が少しふらついた。
「時間稼ぎもそう長く出来そうにありませんね………それに、こう何度も防いでいると、剛鬼丸の注意が下の町に向きかねませんし」
再び振り返った赤井さんは、真剣な表情で俺を見る。
「……夜衣斗さん。覚悟を決めて下さい。私達が剛鬼丸を倒さないと、確実に何の力も持っていない人達に被害が出てしまいます」
赤井さんの言葉に、俺は眉を顰めた。
ついさっきまで何の力も持ってなかった俺に言われてもな………第一、他の人間がどうこうなろうが、知ったこっちゃないんだがな………
と、そう思ったからだ。自分自身を酷い人間だと思わなくもないが、現在の俺は『過去に色々とあった』せいで、自分自身や家族以の人間に対して何の感情も抱かなくなっている。だから、どうでもいい……はずなんだが……。
……まあ、ここで逃げても、一生後悔する事は、間違いないだろうし………そんな重い物を俺は抱えたくない。
そんな自分自身に対する言い訳を心の中でする俺。……結局、どんな事があろうと、既に構築された『心の指向性』はなかなか変わらないんだろう。
………よし!
俺は目を瞑り、ゆっくりと息を吐いた。
「赤井さん……剛鬼丸の能力を教えて下さい」