第二章『カウントする悪魔』66
★???★
襲い掛かってくる剣達に、苦戦を強いられる美春。
速度・攻撃力が飛躍的に上昇しているレベル3になっていると言うのに、剣の包囲網から抜け出せず、その剣すらも破壊出来ずにいた。
(なんなんだこの武霊………大きさから考えて、レベル1の具現化だって言うのに、この強さ……異常過ぎる)
驚愕と共に、美春は焦り始めていた。
時間を掛ければ掛ける程、二人の身が危険になる。
(この武霊といい、はぐれといい……夜衣斗君といい、大きな変化が起きようと……いえ、既に起きているの?)
そう美春が思った時、不意に剣達が霧散した。
「な!……なんなんだ?」
何の脈絡も無しに具現化を止めた相手の武霊使いの意図が分からず、困惑する美春。そして、
「まさか!?」
最悪の事態を思い付き、レベル3のまま夜衣斗達の下へと急ぐ。
コロ丸の嗅覚を頼りに、廃工場地帯の廃倉庫に辿り着き、あまりの静けさに、悪寒が走り、飛び込むように廃倉庫に入ると………そこで固まってる夜衣斗に抱き付く女の子がいて………
「ペアルック?」
二人の格好に思わずそうつぶやくと、その声に気付いた二人が美春を物凄い速さで見て、二人は同じ様な速度で離れた。
★夜衣斗★
「………まあ……二人が無事で、よかったが………」
なんだか気まずそうな団長に、俺は頬を掻いてそっぽを向くしか出来なかった。
「レベル3の武霊使い………五月雨都雅を倒したんだな………君は本当に凄いな」
コンテナの中で倒れている都雅を確認したのか団長がそんな事を言ったので、俺は特に考えも無く首を横に振って、
「俺の力じゃありません」
俺がそう言って飛矢折さんを見ると、飛矢折さんは目を瞬かせて、首を横に振った。
「……まあ、どっちのおかげでもいいが………夜衣斗君。何か拘束するものか、意識の回復を遅らせるものは具現化出来ないか?」
そう言いながら、倒れている都雅に近付く団長。
………あるにはあるが………。
「正直、限界なんですが………」
そう俺が素直に言うと、仕方がないっと言った感じで、団長は廃倉庫の入り口に待機させていたコロ丸を呼んだ。
のしのしと歩くコロ丸に、何となく視線を向けていると、不意にコロ丸が立ち止まり、唸りだした。
嫌な予感を感じて、反射的にコロ丸が唸り声を上げている方向に視線を向け、後悔した。
うつ伏せに倒れている都雅の背中から『剣が生えてくる』瞬間を目撃したからだ。
ぞわっと悪寒が全身を走った。
血を付けて生えている剣はどう見ても、『都雅の心臓を貫いている』。
それはつまり………
霧散する剣。
一気に地面に広がる血。
そして、
ゆっくりと都雅の背中から現れ始めるクラッシュデビル。
はぐれ化!!