第二章『カウントする悪魔』62
★???★
レベル1のコロ丸に乗った美春は、報告のあった都雅の進路に向けて星波海岸を急いでいた。
崩壊した学園大橋を抜けて少しして、不意にコロ丸が横に飛び、止まった。
その瞬間、コロ丸が進むはずだった場所に巨大な剣が生えた。
「何だ!はぐれ?いや、武霊使いか!?」
そう瞬時に判断し、コロ丸に臨戦態勢を取らせる。
美春がはぐれではなく、武霊使いだと判断したのは、殺意の質の違いを感じたからだ。
はぐれの殺意は、ほぼ動物の殺意と同じで、純粋。本能的な殺意。
武霊使いの殺意は、人間の殺意である為、不純。理性的な殺意。
生えた剣から感じた殺意は、理性的な殺意。
(犯罪武霊使いか?このタイミングで?……いや、そもそも、こんな武霊を持った犯罪武霊使いなんていたか?)
剣を警戒しながら思考する美春。
また不意にコロ丸が後ろに飛び退いた。
そして、再び巨大な剣が生える。
だが、今度はそれだけでは終わらず、飛び退いたコロ丸の周囲に十数本もの巨大な剣が生え、動きを封じられた。
(何だ!?この剣。武霊の本体じゃなく、武霊の能力なのか?)
美春がそう考えると同時に、コロ丸の周囲を取り囲んだ剣達が、ゆっくりと動き出す。
(……まるで、私を五月雨都雅の下に行かせない様に足止めをしているみたいだな………)
「何の思惑があってそんな事をしているか知らないが、邪魔をするなら、押し通るのみ!コロ丸!」
そう言った美春は、レベル1の具現化を止め、レベル3憑依具現化なり、飛び上る。
その美春を追随する様に、生えた剣達が回転して飛び出した。
無数の巨大な剣と激闘を開始した美春。
その様子を遠く、商業ビルの屋上から見詰める少女がいた。
フリルが異様に多い服を着たロングヘアの女の子。
自身達を武霊チルドレンと言った五人の少女の一人・麗衣だった。
都雅に何かをしていた時とは違い、無表情だった顔が今は嬉しそうに顔を歪めている。
その歪みは、剣がコロ丸の身体を切り裂くと共に強まり、終には声を出さずに笑い出していた。