第二章『カウントする悪魔』58
★飛矢折★
大きな爆発音がし、あたしが隠れているコンテナが震えた。
始まった。
彼の作戦が………
身体が震えるのが分かる。
自分自身の内から湧き上がる恐怖と、彼へと向けられている心配から来る恐怖。
二つの恐怖が合わさって、震えが止まらない。
………黒樹君……どうか無事で……。
信じる神様はいないけど、自然と、あたしは祈る様に両手を合わせて額に付けていた。
★???★
新たなマガジンを無言具現化し、多少もたつきながらマガジン交換をする夜衣斗。
そして、爆煙を纏いながら落ちてくる都雅に向かって銃弾を連射。
放たれた弾丸は着弾の瞬間に爆裂とは違う強烈な衝撃を発生させた。
交換したマガジンには、『衝撃弾』っと夜衣斗が名付けている着弾と共に衝撃波を発生させる弾丸が込めれている。
この弾丸は、殺傷能力が低く、対象を衝撃で気絶させる為のもの。
だが、衝撃により煙から姿を現した都雅のクラッシュデビルは、所々抉れている所はあるものの本体である都雅は全くの無傷だった。その為、クラッシュデビルに衝撃を邪魔され、いくら弾丸が当たろうと都雅を気絶させられない。
それどころか、爆裂弾により抉れたクラッシュデビルの身体が急速に再生し始めた。
★夜衣斗★
クラッシュデビルの再生に俺は心の中で舌打ちをした。
殺さないレベルに加減したとは言え、あっと言う間にダメージが無かった事になる。
オウキを具現化させる事が出来ない俺に、それは決定的に不利な現実だった。
衝撃弾により俺に向かって降って来ていた都雅は軌道がずれ、廃倉庫の入り口に着地した。
最初の対峙と同じになり、俺も、都雅も、動きを止める。
俺は次の攻撃に迷った為だが、都雅は余裕から動きを止めたのか、ニヤニヤしていた。
「お前は何でそんな攻撃しかしてこない。壊したいんだろ?壊したいんだろ?壊そうぜ!壊そうぜ!!全てを壊そうぜぇ!」
……また壊そうか……やたらと壊す事に執着している奴だな………まあ、だからこそ、連続婦女暴行事件を起こしたんだろう……一番、この世に壊した事を残しやすい。そう考えて………それを理解出来る自分が嫌だな………だが、この理解は、『武器』になる。
「っは!まだ壊す気がないって言うなら、俺が教えてやるよ!俺がお前を壊してやるよぉ!」
そう叫んで突進してくる都雅に、心の中で笑みを浮かべた。
予想通り。
そう思ったからだ。