第二章『カウントする悪魔』56
★???★
五月雨都雅が廃倉庫に入ると、廃倉庫の中央で黒樹夜衣斗は二丁拳銃を都雅に向かって構えていた。
夜衣斗は既に呼吸が乱れており、明らかに意志力不足を起こしている様子だった。
飛矢折巴の姿は見当たらない。
だが、都雅はクラッシュデビルから送られてくる感覚で感じていた。
巴は、この廃倉庫の中に隠れている。っと。
その場所は………夜衣斗の背後にある錆び付いたコンテナの中。
都雅から笑みがこぼれた。
都雅が巴を最初に襲った時、都雅は武霊を出す前に『殺され掛けた』。
だが、殺人への躊躇いから、一瞬の隙が出来き、武霊を使って巴を拘束する事に成功した。
武霊の圧倒的な力に、そして、自分がこれからされるであろう事に、巴が恐怖し、それまで彼女を構成していた『柱』が崩れかけているのを、都雅はありありと感じ、狂気した。
都雅にとって、女性への暴行は、『手段であって、目的ではない』。
あと一歩で、この女は『壊れる』。
そう思った瞬間、都雅はウサギと人を融合させた様な武霊に倒された。
後一歩、後一歩で、それであの女は壊れたのに!壊れたのに!!
その思いで、その思いを止められなくなり、都雅は都雅である為に、
「一、二、三、四、五、六、七、八……」
数え、数え出す。
数字が、都雅にとって、人格を形作っている最たるものであり、根源たるもの。
幼い頃の最初の記憶。
赤子に数字を教える両親。
数える度に思い出し 数える度に苦しくなる。
狭い狭いと苦しくなる。
この世の全てが狭いと感じさせる。
だからこそ、都雅は都雅として、それ以上に、それ以下にならずに済んでいる。
だからこそ、都雅は都雅として、狂気に身を委ね、本能のままに壊す。