第二章『カウントする悪魔』49
★夜衣斗★
……守ってくれた?
………どうなんだろうか?………状況に流されたとは言え……確かに守る気ではいたと思う……だが……守れていないだろう?
心を暴走させて、人殺しを仕掛けて……飛矢折さんに止めて貰って……逃げただけ………挙句、意志力の使い過ぎで意識を失って海に落ち、助けられてる………これは守ったと言えるのか?……………言えないよな……。
「黒樹君?」
俺のあまりの無反応振りが心配になったのか、飛矢折さんが俺の顔を覗き込んできた。
固まる俺に、飛矢折さんは苦笑して、
「とにかく。あたしは黒樹君のおかげで助かったんだから、そんなに自分を卑下にする事はないと思うよ。………怖くても、立ち向かえたんだから………私なんかと違って……」
そう言って、暗くなった。
………うまい言葉が見付からない。
どうすればいいんだろうか?………俺は、励まされた事はあっても、励ました事なんてないんだけどな……そんな心理状態じゃないし………そんな状況でもないかもしれないしな………そう……そんな状況じゃない。今は、少しでもよい状況に持ち込むために、今の状況を確認しないと……。
「セレクト。スカウトサーバント」
★飛矢折★
不意に彼が新たな円盤を具現化させた。
尖った二つの突起物と大きなカメラが付いた小型円盤。
あたしが不思議そうにふわふわと浮いているそれを見ていると、
「様子を見させに行かせます」
っと言って、ちょっと間を開けて、
「……見ます?」
っと聞いて来たので、よく分からず頷いてしまう。
その瞬間、あたしの視界に、『もう一つの視界』が現れ、あたしは目を見開いて驚いた。
円盤を見ているあたしの本来の視界と、あたしを見ている円盤の視界が『同時に見える』。
混乱して、彼を見ると、彼もちょっと困惑している様だった。
「……このスーツ。PSサーバントの機能の一つなんですが………慣れが必要そうな機能見たいですね……」
……色々と考えているな………凄いけど……………
「黒樹君」
「……なんです?」
「覗きに使っちゃ駄目だよ?」
「……するわけないでしょ」
「ちょっと間が開いた。あやしぃ〜」
「……勘弁して下さい」