第二章『カウントする悪魔』48
★夜衣斗★
……なんか気が付くと、飛矢折さんが楽しそうに………暴れてた。
PSサーバントで強化された身体で暴れているので………元々のポテンシャルの高さもあって……俺自身も強化されているはずなのに、視界に捉えるのがギリギリな感じだった。
………とんでものねぇ……こんな人に、ちょっとでも手を出そうと考えたのか………手を出していたら、死んでいたな俺。
一通り暴れると、俺の視線に気付いた飛矢折さんは、ちょっと恥ずかしそうに戻って来た。
「つい」
……ついって………。
思わずため息が漏れる。
まあ、いいけど……さ。
「……これって……凄いね」
そう言って、俺の隣に座る飛矢折さん。
……気のせいか、さっきより近い位置に座ったような……まあ、気のせいだろう。
「こんなものも考えているなんて……黒樹君は凄いね」
……凄い?
その言葉に、思考がぐらりと揺れて、心が乱れた。
……………………俺は……
「凄くなんかない」
思わずそう口に出していた。
★飛矢折★
「え?」
あたしが何気なく言った言葉に、彼は過敏に反応した。
彼を見ると、彼は俯いて、何かに耐えている様だった。
「これは……あくまで武霊の力……俺の力じゃない」
今まで聞いた彼の声の中で、最も声の質が暗い。
「でも、武霊を具現化出来るのも、あんなに強い武霊が出来たのも、黒樹君自身によるものでしょ?」
あたしの言葉に、彼は首を横に振った。
「……それは、ただそれだけの事だし、偶々空想好きだっただけ……」
……それはそうかもしれないけど……それだけで、武霊使いになれるってわけでもないし……それに、あなたは………
「あたしを守ってくれたじゃない」