プロローグ17
……まあ、逃げるのは賛成だが……あんな狭い場所に乗れって言われてもな……女の子の後ろってのも……
「早く!」
剛鬼丸の三撃目の音と、赤井さんに怒鳴られた事により、俺は慌てて交流に駆け寄り背に乗った。
場所が狭くて、バランスが上手く取れない。
「肩に掴まって下さい!」
四撃目の音。殴るコツでもつかんだのか、剛鬼丸の攻撃の間隔が速くなっている。
これは、遠慮なんてしている場合じゃないな……。
俺は意を決して、赤井さんの両肩に手を置いた。
柔らかくて……困る。色々と……なんだか近くにいるせいかいい匂…うぉ!何考えてんだ俺は!?これじゃあ、変態じゃないか!
場違いな葛藤で苦しむ自分に……近くに壁があったら頭をぶつけたい。
「夜衣斗さんは、オウキに避難の指示をして下さい。行きますよ。コウリュウ」
五撃目の音と共に、コウリュウは羽ばたき、低く宙に浮き、そのまま滑空して治療中の男性を両足で掴み、一気に上昇した。
あまりの急激なGと風圧に目を瞑る俺。
ほぼ一瞬と言える時間でそれは穏やかになり、目を開けると小さくなった町並みが見えた。
しかも、気が付くと足下のコウリュウが再び巨大になっていた。どうやら、大きさを自在に変化させる事が出来る様だ。……もしかして、オウキも大きさを変化させたりできるんだろうか?まあ、今は大きくする必要性は全くないが……。
「夜衣斗さん」
風音に負けない様に大声で赤井さんが話し掛けてきた。
「たむらさんを治療してるんですよね」
その赤井さんの質問に俺は頷いたが……よくよく考えると前を見ているから見えないな。と言うか、あの男性、たむらさんって言うのか。普通に考えて田村だよな。うん。
「一応……そうだが」
「大丈夫です。そう言う設定のものなら。どんな原理だったとしても、ちゃんと治療されます」
……なるほど、物理法則とかそんなの関係ないんだな。オウキとか……本当に、何なんだろう?
いつの間にかコウリュウと並んで飛んでいるオウキが視界に入り、改めてそんな疑問が浮かんだ。
「問題は、剛鬼丸ですね」
そう言って後ろを見る赤井さん。
つられて俺も後ろを見る。
丁度、そのタイミングで何かが下から上に………ジグザグにこちらに向かってくる光線が俺の視界に入った。
どうやら剛鬼丸は、直線限定で空を飛行できるようだ……空まで追ってくるとなると……逃げようがないじゃないか……。