第二章『カウントする悪魔』42
★飛矢折★
不意に彼の服が『普通の服に戻った』。
彼を見ると……意識を失っている!?
何があったかは分からない……でも!このままだと、海に叩きつけられる!
彼の服が普通の服に戻った事で、急速に落下し始める私達。
かなりのスピードがあったので、意識を失っている彼がそのまま海面に叩きつけられれば………。
あたしは、抱き抱えられている状態から、彼を守る様に抱き抱える状態に無理矢理し、海面に背中から叩き付けられた。
痛みに意識が飛びそうになるけど、気合いで意識を保ち、彼を抱えたまま泳いで直に海面に出る。
彼の顔が海の中に入らない様にしつつ………服を着たまま泳ぐ練習と、意識を失った人を抱えて泳ぐ練習が初めて役にたった………何事も色々とやっておくものね。
それにしても……海温がまだ泳ぐには冷た過ぎる。
早く海から出ないと………。
陸地を探して視線を巡らせると………ぼろぼろの倉庫が見えた。
嘘!ここって『あいつら』の溜まり場の近くじゃない………どうしよう………って………まだ日が落ちてないから平気か………とりあえず早く陸地に上がらないと………。
私はそう判断して陸地に上がれそうな場所を探して泳ぎ出した。
★美羽★
「行くよ、コロ丸!」
美春さんの命令に反応して、星波海岸で状況を見守っていたコロ丸が海に向かって走り出す。
海まで僅かな距離だけど、コロ丸が海に入るい頃にはレベル1だった姿がレベル2の巨体になっており、物凄いスピードで海の中を進み出した。
コロ丸の能力は、自身の体毛を自在に操れ、その硬さも柔らかさも自在に変化させる事が出来る。
その能力を利用して、コロ丸は水の中でも高速で移動出来るらしいけど……どんな風にしてるんだろ?ちょっと謎かな?
あっと言う間に陸地から一番近くにいたはぐれ近付き、コロ丸の体毛が一斉に伸び、無数の鋭い刃になった。
コロ丸に気付いたはぐれはコロ丸に殴り掛かろうとするけど、コロ丸のスピードは体毛の刃を作った時点で更に加速していて、すれ違う。
少し間を置いて……はぐれの身体はばらばらになった。
擦れ違った際に切り刻んだろうけど……全く見えない。
やっぱり美春さんのコロ丸は凄いなぁ〜。
って思わず感心していると、ばらばらになったはぐれの身体が次々とレベル1のはぐれになるのが見えた。
「琴野!早く!!」
「言われなくても分かってますわ!さあ!舞い踊りなさいヒノカ!!」
琴野の命令に分裂中のはぐれの上を飛んでいたヒノカが上空に止まり、垂直に回転し始める。
その回転スピードはあっと言う間にヒノカの姿が分からなくなるほどになった。
それと共に、風の渦が生じ始め、瞬く間に巨大な竜巻になる。
巨大な竜巻は下にいたレベル1のはぐれ達を吸い込み、動きを封じた。
「赤井さん!早くしなさい!!」
「言わなくても分かってる!コウリュウ!ファイアーブレス!!」
私の命令に、コウリュウははぐれを呑み込んだ竜巻に向かってファイアーブレスを放つ。
一瞬で、竜巻が炎の竜巻になり、次々とはぐれを消滅させていくのが見えた。
竜巻を起こしているヒノカは、フェニックスのイメージが基になっているから、熱によるダメージは一切受けない。
だから、こう言う事も出来るんじゃないかって昔三人で話した事があって………本当にやる事になるなんて思いもしなかったなぁ〜。
「なにぼうっとしてますの!?次行きますわよ!次!」
「うるさい!分かってる!」
「はいはい。二人とも喧嘩しない。喧嘩しない」