プロローグ16
俺が困って沈黙していると、ドラゴンの後ろから自転車から降りた女の子が出てきて、威嚇するドラゴンを手で制した。
途端に大人しくなるドラゴン。
「……私はあかいみはって言います。この子はコウリュウ。あなたは?」
あかいみは?赤井……美羽……か?………まあ、そんな事より、名乗られたら、名乗り返すのが礼儀だよな……。
「黒樹夜衣斗……こいつはオウキ」
俺の名乗りに困った顔になる赤井さん。
「夜衣斗さんとオウキですね……初めて聞く名前ですね。どちらも……もしかして、ここに引っ越ししてきたばかり……だったりします?」
とりあえず、頷く俺。
かなり困惑した表情になる赤井さん。
その時、何かを叩く強烈な音と、バキンと何かが割れる音がした。
音のした方。剛鬼丸の方を見ると、剛鬼丸は自分を抑え付けている巨大な鱗に、拳を器用に叩き込んでいた。
一撃でひびが入ったと言う事は、あまり持ちそうにないな……。
「とにかく、詳しい話は後で」
そう言うと、赤井さんは素早くコウリュウの背中に乗った。
「夜衣斗さん。オウキをどこまで使えます?」
そう問われて首を傾げる俺。どこまでって言われてもな……。
本当に困った顔になる赤井さん。
剛鬼丸の二撃目の音がした。鱗のひび割れが更に大きくなる。
「と、とにかく、私の後ろに乗ってください。一旦、逃げます」
……………。