第二章『カウントする悪魔』31
★美羽★
海面から浮かび上がって来たレベル2のはぐれは、一つ目の巨大魚人だった。
先手必勝!
「コウリュウ。ファイアーブレス!」
一つ目魚人の頭上斜め上からコウリュウのファイアーブレスを浴びせる。
叫び声を上げて海面に倒れる一つ目魚人…………あれ?弱!?
あまりのあっけなさにちょっと茫然としていると、燃え上っている一つ目魚人の身体がなかなか消えない事に気付いた。
嫌な予感がして、コウリュウに次の攻撃命令を出そうとした瞬間、一つ目魚人の身体が崩れ、そこから小さな、っと言っても人ぐらいの大きさの一つ目魚人がわらわらと出てくる。
わらわらと出てきた一つ目魚人は、どんどん海に潜って火を消し、物凄い速さで海岸へと泳いで行く。
海岸には多くの武霊使いがいるけど………そのほとんどが、あまり戦った事がない人達のはずだから………急いで少しでも数を減らさなきゃ!
「コウリュウ。アイスブレス!」
★夜衣斗★
コウリュウから放たれた冷気のブレスによって、一瞬の内に凍る。
凍った海に巻き込まれたはぐれはほぼ同時に消滅している様だが………半分以上が凍ってない海の下に逃れていたみたいで、今度はコウリュウの攻撃を纏まって喰らわない様に四方に散らばって泳ぎ始めるのが見えた。
………どうやらあのレベル2のはぐれは、攻撃を受けると分裂する様だが……それ以上の分裂はないみたいだな………分裂体はそんなに強くなさそうだし……美羽さんがいれば平気そう……か?……まあ、俺は向こうを気にしている余裕はあまりない。
都雅の武霊クラッシュデビルを倒したとは言え、都雅自身はまだ意識ははっきりしている様だし………これで終わりとは思えなかった。
油断無く、都雅が何をしても直に対応出来る様に、都雅を睨み付ける俺。
都雅は自分の武霊が倒されたと言うのに、笑みを浮かべており………不気味だった。
……無言の睨み合い。
このまま睨み合いを続ければ、多分、逃げた他の生徒が自警団か警察に連絡しているだろうから………いや、待てよ?はぐれが発生している今、こっちに人員を回せる余裕が向こうにあるのだろうか?………だとしたら、こっちで都雅を無力化するしかないか………
「セレクト」
GMサーバント。っと言おうとした時、不意に都雅が口を開いた。
都雅の発したその言葉は、あまりにも予想外で、唐突な言葉であり………俺の動きを止めるのに十分な………
「お前、『いじめられていた』だろう?」