第二章『カウントする悪魔』30
★飛矢折★
初めて見る彼の武霊は、どこか鋭角的な騎士を思わせる姿をしていた。
怖い。
彼の武霊でも………怖かった。
怖くても、今のあたしは、恐怖で身体が硬直していて、二体の武霊の激突から、目を離す事が出来なかった。
彼の武霊から出た小さな円盤が、あいつの武霊を止めて、続けて出た同じ五つの円盤が、
「キューブゲージ!」
っと彼が命令すると、あいつの武霊の周りに取り囲むように移動して、その瞬間、あいつの武霊の動きが止まった。
逃れようと暴れようとするあいつの武霊。
でも、多少身体が動くだけで、身動きが取れない。
………多分、あの小さな円盤から、見えない何かが出ていて、あいつの武霊を押さえ付けていると思うけど………こんなに………圧倒的だなんて………
「セレクト。振動刀」
その彼の命令に、彼の武霊の壊されていない方の腕の内側が開き、一振りの刀が飛び出して、手に収まった。
彼の武霊が刀を上段に構えると同時に、
「シールド解除」
っと彼がいい、彼の武霊は、あたしの鍛えられた動体視力で何とか捉えられるスピードで、振り下ろした。
僅かに動いていたあいつの武霊が動きを止めて、霧散する。
………美幸があたしを助けてくれた時でさえ、こんなに早くあいつの武霊を倒していない。美幸の武霊だって、強力な武霊なんだけど…………?
あいつの武霊を簡単に倒したのに、彼は緊張を解いていなかった。
勿論、武霊使いじゃないあたしだって、今ので武霊が完全に消えたわけではないのは、分かっているけど………これだけ圧倒的に倒したのなら、戦意を………え!?
視線をあいつの武霊が消えた先、あいつ自身に向けると、あいつは
『笑っていた』