プロローグ15
一撃で俺の身体を粉砕するであろう剛鬼丸の拳が放たれる。
ぼろぼろとシールドサーバントがそれを防ぐが、四機ある一機が活動を停止して地面に落ちて霧散した。
二撃目、二機目が落ちる。
三撃目、三機目が落ちる。
オウキ!早く戻って来い!!
四撃目、最後の一機が落ちた。
剛鬼丸が、五撃目を放とうと拳を振り上げる。
その背後に、飛行して戻ってきているオウキの姿が見えた。
どう見ても、間に合わない!
今度こそ、死ぬ!
そう諦め掛けた瞬間。
何かが剛鬼丸の脇に当たり、九の字に折れ曲がって剛鬼丸が横に飛んだ。
唖然とするしかない俺。
剛鬼丸が飛んだ方向に視線を向けると、巨大な赤い鱗の様なものが剛鬼丸を地面にめり込ませて押さえ付けていた。
そして、背後から、何かが飛んでくる音がした。
鳥の様だが、音の大きさが全然違う。
振り返って、音の発生源を確認すると、そこには『巨大な赤いドラゴン』が飛んでいた。
赤く十メートルぐらいありそうな巨大なドラゴン。
それがこちらに向かって飛んできていた。
正直……驚き疲れた。
次から次と非常識な事ばかり起きて……いい加減にして欲しい。
そんな事を考えていると、オウキが戻ってきて、ドラゴンから俺を守る様に降り立った。
ちょっと、ほっとする。
現状、唯一明確な味方はオウキだけだからだろうが……。
状況から考えて、剛鬼丸を抑えているのは、このドラゴンなのだろうが……待てよ。もし、これがオウキや剛鬼丸と同じ存在なら……。
何となく予感めいたものを感じて、道路の方を見る。
間を置かず、自転車に乗った誰かが来た。
ショートカット。活発さを絵に描いたかの様な顔付き。青い上下のジャージ。年頃は俺と同じか、もしくは下ぐらいの女の子だ。個人的に……美少女の分類に入るんじゃないかと思う。……そんな感想を思っている場合じゃあいんだが……。まあ、何にせよ。いかにも体育会系で、はきはきしてそうな、俺の苦手なタイプっぽい。……どうでもいいが……。
どうしたものかと、剛鬼丸を警戒しながら女の子を見ると、目が合った。
視線が俺からオウキ、オウキから治療中の男性へと動き、驚き、困惑の表情を浮かべる女の子。
彼女が何かを言う前に、赤いドラゴンが彼女の前に守る様に降り立った。
どう言うわけか、その大きさが二メートルぐらいのサイズに縮んでいる。
これでドラゴンは女の子の…パートナーか?……だと確証を得たが、何か言わないと攻撃されそうな感じでドラゴンに威嚇されている。
女の子の腕に腕章はないが、こんな所に来るぐらいだから、男性と同じ役割か、それに近い人間なんだろう……多分。
だが、なんて言えばいいんだ?
正直、初めて会った女の子に話し掛ける度胸は無いし、経験も無い。何より何にも分かっていないこの状況が、それに拍車を掛けている。それ所ではないのは分かってはいるが……。
何だか、さっきとは別の意味でピンチだ………かなり情けないな、俺。