第二章『カウントする悪魔』25
★飛矢折★
………どうしよう………いや、でも、こうなる事はある意味予想出来たかもしれない事なんだけど………。
周囲から、途切れ途切れだけどあたしと彼の事を噂している声が聞こえる。
どうやら、昨日まで送り迎えを目撃した人がいて………今朝一緒に教室まで来たのが決定的になっちゃったみたいで………わざとか、無意識か、あたしの耳がいいのか知らないけれど、事実無根な事ばかりを話しているのが聞こえてくる。
「私、手をつないでる所を見たよ」
「え〜嘘。あの飛子が!?」
繋ぐどころか、離れて歩いてたはずだけど………。
「私なんてキ」
流石に聞くに堪えられなくなり、あたしは教室を出た。
教室を出る際に、一瞬だけ彼を見たけれど、自分が私とどんな噂話をされているかなんて気付いていなさそうだった。
…………何だろう?妙な気分になった。
★夜衣斗★
帰りのホームルームの前。
不意に村雲が、
「そう言えば………黒樹ぃ〜」
そう言ってニヤリと笑みを浮かべる。
………?
「お前、飛矢折と一緒に登下校してるんだってな。大人しそうな奴だと思ったが、以外にやるじゃねぇか」
………なんだかな。不可抗力で、互いに望んでしている……わけじゃない……んだよな?
「まあ、飛矢折は……反射的に技を掛けてこなければ……この学校でトップクラスにはいる美人だからな………密かに狙ってる連中は多いんだぜ?」
確かに………美人だよな………まあ、そうなんだろう。もっとも、本人は、恋愛とは縁遠そうな生活をしているみたいだけどな………。
「ついでに言うと、美羽も同じ様に狙ってる連中が多くてな………こっちは色々と事情があるから手を出す奴はいないが………」
………美羽さんも確かに美人だよな………この町に来てから、度々思うが、本当に妙に美人と関わりが多くなってるな………何だか漫画とか小説とかアニメとかの主人公になった気分だ。…………それにしても、色々と事情がある?
その言葉に、俺はふと、数日前に見た無人の家を見詰めている美羽さんを思い出した。
「………でだ、武霊使いにもその二人に気がある連中がいてな……逆鬼ごっこ中、妙に殺気のある奴を見かけなかったか?」
……ああ……なるほど………妙に迫力がある……っと言うか殺気立ってる奴が何人かいたな………そう言う理由か………
「速攻で帰る俺の耳に入るほどだから、黒樹が二人の近い所にいるって事を知った連中、結構多くなってるんじゃないか?………明日の逆鬼ごっこ大変だぞぉ〜」
……そう、面白そうに言われてもな………どうも俺自身とは関係ない所で事態が悪化している事が多いな……最近………それにしても……俺の様な冴えない男が………あの二人とどうにかなると……本気で思ってるんだろうか?………っは!…………っふう……ありえないだろう?……普通。