第二章『カウントする悪魔』22
★夜衣斗★
「どう言う心変わりだ?」
村雲が面白そうにそんな事を聞いてきた。
どう言うって言われてもな………説明出来ないよな………まあ、村雲は俺が昨日は逃げる気でいたのを見抜いていたからな………俺だって、昨日までは逃げるつもりでいたんだが………あの最後の敵からの情報で、『また否応無しに戦う事になる事が確定した』ので、少しでも武霊の使い方を慣れる為に…………正確には、武霊使いをいかに『傷付けないで無力化』出来るかを試した。
オウキや攻撃系のサーバントで武霊を攻撃し、倒すかその行動を邪魔している間に、その武霊使いを無力化する。今回はあらゆるガスを作り出す事が出来る『GMサーバント』を使って、吸うと一気に寝てしまう睡眠ガスを使った。
それほど強力なものに設定していなかったので、そろそろ睡眠ガスを吸って眠った人達………多分、起きているはず。
「………ほんと策士だよなぁ。武霊も強いし………最強なんじゃね?」
………最強……ね……。
その冗談交じりの言葉に、俺は苦笑した。
こう思ったからだ。
『この町限定の強さに、何の意味があるか?』
っと。
その時、俺は自覚できる程、『暗い感情』が心の底で動いたのが分かり………眉を顰めた。
★飛矢折★
「ほんと策士だよなぁ。武霊も強いし………最強なんじゃね?」
その村雲君の冗談交じりの言葉に、一瞬だけ、彼の気配に不穏な気配が混じったような?…………いけないいけない………何だか彼を自然と気に掛けてしまう……彼がどこか頼りない雰囲気を出しているから……だと思う。
……それにしても……どうも信じられない。彼が一人で百人近くいる武霊使いを無力化した……………やっぱり武霊って……好きになれない。
★???★
五月雨都雅が目を覚ますと、そこは高神姉弟がいなくなった事により完全に無人となった廃校の保健室だった。
ややぼーとする頭で、上半身を起こすと、胸板に置かれていた何かが落ちる。
確認すると、それは自己注射型の注射器だった。
その注射器には何かが書かれた紙が張り付けられており、見るとその注射器の説明が書かれていた。
その内容を見て、都雅は、
「っくっくははははは!」
唐突に高笑いをし始めた。