第二章『カウントする悪魔』18
★飛矢折★
今日の彼の逆鬼ごっこ対策は………正直、とてもびっくりした。
昨日と同じ様に逆鬼ごっこが始まってから少しして学園大門を通ると、その先には彼はいなかった。
代わりに、知らない女子高生が一人、学園大門の壁に寄り掛かって待っていて………あたしを確認すると、
「行きましょうか?」
っと彼の声で言った。
あたしが、びっくりして固まっていると、女子高生は苦笑して、一瞬だけ彼になって、女子高生の姿になった。
教室に入るまでにポツリポツリと聞いた説明によると、学園大門を通る際に出来る学園側のからの一瞬の死角を付いて、彼の偽物を複数作って、半分をそのまま、残り半分の姿を消して四方に散し、隠れていた彼は私の着ている制服を参考に女子高生の姿に化けた。っとの事。顔は、話によると彼が今お世話になっている叔母の、偶々見付けた高校生時代の写真を使ったらしい。
………昨日は武霊使いとしての力を見なかったけど………こんな事まで出来るなんて……………今は、正直………少しだけ………怖いと思ってしまい。
あたしは………そんな自分を恥じた。
★夜衣斗★
………失敗したかな………。
今朝、逆鬼ごっこの対策の為に、ステルスサーバントの機能の一つを使い、俺は写真で見た高校生時代の春子さんに化けた。………っで、迂闊にも、その姿のまま、飛矢折さんと一緒に教室まで来てしまった。
途中、飛矢折さんの微妙な変化に、どこか緊張している雰囲気を感じ、俺はつい動揺してしまい、べらべらと今回の対策の説明をしてしまい………より微妙だが、飛矢折さんとの距離を遠ざけてしまった気がする。
……………まあ、遠ざかったからと言って、何が問題あるわけでもないんだが………嫌われるってのは好きじゃない………まあ、誰だってそうか。
「もう三日目か………流石にネタが尽きてきただろ?」
ボーっと飛矢折さんの後姿を見ていると、不意に村雲がそんな事を言ってきた。
………ネタ?…………ああ、逆鬼ごっこの事か……。
ふと気が付くと、周囲の視線がこっちに集まっていた。
……………
「………そろそろ……逃げるだけってのも……あきたな」
とぼそっと言って、口の端を上げる俺。
それに周囲がざわつくのを感じて………よし、これでもう少しだけ逃げに徹せられる。
「………黒樹って、策士だなぁ」
っと後で村雲に言われたので、村雲は俺の意図を見抜いている様だったが……。
……まあ、村雲は武霊使いじゃなくなっているらしいから、逆鬼ごっこに関係無いからいいんだが………ん〜確かに村雲の言う様に、そろそろ逃げの策も………使えそうなのはそろそろ尽きそうだな………さて、どうしたもんかな…………ってか、そろそろ参加者側も何らかの策を取ってくる可能性がある様な………そっちの対策も考えておかないと……ん〜………めんどくさい。