第二章『カウントする悪魔』16
★夜衣斗★
日が完全に沈み、星が瞬いている。
………まあ、要するに下校時間が完全に夜になってしまったと言う事。
どうも昨日、俺が遅くまで隠れていた事が知れ渡ったらしく、結構な人数がずっと残っていて………朝日先輩の部長命令もあり、ずっと残ってたわけで…………何と言うか、あの人は『何か起こる』事を期待しているのだろうか?……何も起きないから!ってか、何かしたら、殺されるって…………殺されるは大げさにしても……少なくとも、俺がどうこう出来る相手だとは思えないな………昨日今日でそれを十分に思い知らされたと言うか…………こんな人、漫画とか、架空の存在以外に、本当にいるとは思いもしなかったっと言うか………まあ、そんな人でも、より思いもしなかった存在・武霊には敵わなかったって事なんだよな………どれだけ理不尽な存在か……って事だよな……。
「ごめんね」
不意に、飛矢折さんが俺に謝った。
★飛矢折★
申し訳ない気持ちで、いっぱいだった。
多分、あたしと一緒に帰る事にならなければ……今朝の事も含めて考えれば、彼はとっくに帰っている。
それをあの部長は………別に送り迎えなんていいって言っても聞きやしない………完全に面白がってる……あの人はぁ〜…………まあ、でも、朝日部長のこれは、今に始まった事じゃないし………今、ここで怒ってても仕方がない………それより今するべきなのは、
「ごめんね」
っと後ろを歩く彼に、あたしは振り向きもせずにあやまった。
「朝日部長が、こんな事を言い出さなければ………あなたが、こんなに遅くに帰る事になんてならなかった………よね?………だから、ごめんね」
あたしがもう一回謝ると、後ろで首を横に振る気配がした。
「………それは……こっちのセリフ……謝るのは、きっと……こっちだと」
恥ずかしいのか、たどたどしく言葉を紡ぐ彼。
「………その、ごめん」
絞り出すように、謝る彼に………あたしは、何とも言えない気持ちになった。
こう言う風に、私は男に謝られた事がない。
………謝らせた事はあるけど………。
なんだか、新鮮と言うか………。
「お互いに謝っちゃったら、落ち着き所がないじゃない」
私がそう言うと、彼が頬を掻く気配がした。
それが可笑しくって、私は昨日と同じ様に笑い出してしまった。
うん。深く考えるのは止めよう。
たった数日、彼とだったら、少なくとも……平気………うん。きっと平気………だから、
「……じゃあ、今更だけど……しばらく、送り迎えよろしくね」