第二章『カウントする悪魔』11
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五月雨都雅は自分を脱走させた者の先導で、『地中の中を歩いていた』。
地中を掘って進んでいるわけではない。
まるで都雅の周囲の土が『無い』かの様に透過しており、透過されていない足下の土を踏み締めて進んでいる。
地中なので明かりは先導する者の持つ懐中電灯のみ。
その光が映し出す者は二人。
そのどちらも『小学生ぐらいの女の子』だった。
その子達は、異様に赤黒い、まるで血で染めたかの様なゴシックロリータの服装をしており、小さな子供とは思えない異様な雰囲気を纏っている。
もっとも、都雅にとってはそんな事はどうでもよかった。
ただ、ただ、ただ、『壊したかった』。
目の前を歩く、少女二人を。
ここが地中だと言う事や、その二人に助けられた事、勿論、今『地中を歩けているはその少女二人のどちらかの力』によるものだと言う事すら、気にもしない。
そして、襲い掛かろうと足に力をためた。
その瞬間、都雅の周囲に瞬時に『無数の刃』が出現した。
皮膚に触れるか触れないかのギリギリの所で空中に浮いているその無数の刃に、都雅は身動きが取れなくなる。
少女の一人が振り返り、その年齢にはとても似合わない、『狂喜の笑みを浮かべた』。
都雅は今まで感じた事のない、『恐怖』を、本能が警告する『恐怖』を感じていた。
『勝てない』。『殺される』。っと。
その思考に、都雅は『無意識の内』に『歓喜に近い笑み』を浮かべた。
少女は開いた掌を都雅に向け、その手を閉じようとした時、動きが固まった。
二人の少女の片耳には、イヤホンが入っており、そこから制止の命令でも来たのか、舌打ちをして少女は手を下した。
っと同時に、都雅の周囲を囲んでいた無数の刃が一瞬の内に消えた。
無言のまま再び歩き出す二人の少女に、都雅は素直に付いて行く。
都雅は二人の少女に付いて行きながら、先程の刃で僅かに切れた頬をまるでその傷を楽しむかの様に、愛おしむかの様に撫で、狂気の笑みを浮かべていた。