第二章『カウントする悪魔』8
★飛矢折★
あたしが星波町に着き、改札口を出ると、一人でサンドイッチを黙々と食べている彼がいた。
彼一人で食べるにしては随分大きな紙袋な気が………見た目に反して大食い?
「黒樹君。おはよう」
「………おはよう」
「……それ、黒樹君が作ったの?」
ちょっと気になったので聞いてみたら、彼は首を横に振った。
「一人で全部食べるの?」
「……………」
彼は無言で紙袋の中身を見せてくれた。
中は袋の半分ぐらいしか入ってない。
………袋が他に無かったのかな?………とりあえず、
「ごめんね。朝日部長の思い付きに付き合わせちゃって」
首を横に振る彼。
「………えっと………じゃあ、行きましょうか?」
首を縦に振る彼。
………しばらく互いに歩きだすのを待ってしまって………このままじゃずっとこの場所に居そうだったので、私から歩き出した。
彼は無言で、サンドイッチを食べながら、少し離れて歩き出す。
…………そう言えば、男の子と一緒に登校するのって、いつ以来だろう?………。
★夜衣斗★
「ごめんなさい夜衣斗さん」
星電を切った美羽さんは、そう謝って、持っていた紙袋から自分の分のサンドイッチを取り出して、俺に渡した。
「私、これから星波警察署に行かなくちゃいけなくなりました。っで、これ、お母さんが作ったサンドイッチです。食べて下さいね。じゃあ、そう言う事で」
余程急いでいたのか、そう一気にまくし立て、コウリュウを具現化し、あっと言う間に空へと消えてしまった。
………脱走って言ってたから、警察署の留置場から誰かが脱走したって事か?………まさか、高神姉弟?い………またあんな連中と戦う事に………ならないよな………………うまそうなサンドイッチ………。
何だかお腹が空いたので、美羽さんから渡されたサンドイッチを頂く事にした。
………おお!かなり美味しい!!………帰ったらお礼を言わなきゃ………。
そう思っていると、飛矢折さんが現れたので、軽く挨拶と会話を交わして二人で登校。
…………それにしても……何だろう………妙に『嫌な予感』がする。
正直に言えば、飛矢折さんの様な美人と一緒に登校するのは、かなり嬉しい。
タイミングよく美羽さんがいなくなったので、何だが、何でか、ほっとしたが………どうしてか嫌な予感がする。
………ふっと思ったが、サヤや最後の敵が言ってた様に、俺が『死ぬべき運命を変えられた』のなら、某映画の様に、俺には『常に死の運命が寄ってくる』んじゃないんだろうか?………だから、美羽さんに町を案内された時、高神姉弟に襲われた。そして、その死の運命に『宿命の悪意』が常に関わっているとすると………。
視線が自然と先に行く飛矢折さんに向かった。
今、あの時の美羽さん同様に俺に深く関わっているのは飛矢折さんだが………飛矢折さんが、宿命の悪意そのものっと言うのは………考えにくいな………だとすると、美羽さん同様に、言い方が嫌な感じだが、飛矢折さんは『宿命の悪意の呼び水』になるんじゃないだろうか?…………そうなると……………もしかして………いや、思い出して見れば、飛矢折さんは、宿命の悪意に関わっている。
連続婦女暴行魔。
そして、犯罪武霊使い。
その犯罪者に襲われた飛矢折さん。
留置場から誰かが脱走。
ここまで揃えば………どう考えても…………飛矢折さんに関わらなければ済むと言う問題じゃないだろうし、そもそも、それは飛矢折さんが『再び襲われる』って事なんじゃないだろうか?……………それを予想出来て………飛矢折さんをほうっておく事が、俺に出来るのか?………………。
………また、ふっと思ったが………もしかして、朝日先輩は、『こうなる事を考えて俺に飛矢折さんの送り迎えを依頼した』……わけないか………考え過ぎだな………。
俺は自分の考え過ぎにため息を吐いて、苦笑した。